トヨタ自動車が期間従業員を正社員に転換
トヨタ自動車と系列企業が、工場で働く期間従業員を正社員への転換を拡大し、2016年度は1,000人を超え過去5年で最多となる、と報道がありました。
背景には何があるのでしょう。
少子高齢化により、15歳~64歳の生産年齢人口は2013年には8,000万人を下回り、2015年には7,682万人となっています。
今後も減少し続け、2025年に7,085万人、2035年に6,343万人になることが予想されています。
減少する生産年齢人口を見越す形で企業は採用に積極的で、有効求人倍率もリーマンショック翌年平成21年0.45倍だったものが、平成26年には1.11倍と1倍を超えてきて、平成28年9月現在は1.40倍と大幅に上がってきています。
ただ、有効求人倍率は上がってきたものの、それは正社員を採用せずに非正規従業員を増やしてのことでした。
非正規雇用者の増加自体はバブル崩壊後(平成3年前半頃)からですが、平成元年には非正規比率が19.1%たったものが、平成6年には20.3%、平成20年34.1%、平成27年には37.5%と4割近くになってしまいました。
正社員化が進むことは雇用の需給バランス上望ましい ただし問題も
トヨタ及び系列企業の期間工も非正規従業員ですが、これを一気に1,000人を正社員にするとのことです。
やはり少子化による生産年齢人口の減少に危機感があるのでしょう。
技能の伝承も不可欠で、優秀な人材を今から囲い込むため、大きく舵を切ってきたようです。
雇用も需要と供給のバランスがもちろんありますから、少子化による供給減が、需要側に危機感を与えています。
政府が主導して賃上げを要請したり、最低賃金を上げたりしなくても、今回のような需給バランスによる賃上げや正社員化による雇用の安定は、望ましい姿であると言えます。
それにより非正規比率が下がってくれば労働者の賃金も上がってくるでしょう。
ただし、中小企業にとっては今後、大手企業に「採り負ける」ことが起こってくることが予想され、優秀な人材を確保するためにも生産性を上げ、高い賃金を支払えるようにしていくことが重要になってくるでしょう。
そのための投資など、政府も後押しする必要がありそうです。
雇用の安定に向けての対策と同様に少子化対策も待ったなし
また、いくら需要側が強く雇用は安定していくと行っても、今後とも生産年齢人口が減少していくことは、購買力の減少、ひいては国力の低下を招きますから、少子化対策も待ったなしです。
よく言われることですが、長時間労働による家事への不参加も少子化の大きな原因とも言われ、労働分野での対策は、ワークライフバランスを考慮した働き方をいかに充実させていくかなど、課題は山積しています。
(影山 正伸/社会保険労務士)