育休について最長1年半を延長して2年に 厚労省が方針固め
現在、最長1年半まで認められている育休(育児休業)。
しかし、子どもを預けて仕事に復帰したくても保育園に入れず、退職せざるを得ない女性が多いことを受けて、厚生労働省は育休を最長2年に延長する方針を固めました。
「育休2年まで」については各方面で賛否両論が沸き起こっています。
日頃から、働く女性たちの相談を聴き、自らも3回の育休取得経験のあるキャリアコンサルタントの立場から、考えを述べていきます。
育休は「最長2年」ではなく「最長2歳」にすべき
まず一番重要なのは、「最長2年まで」ではなくて「最長、子どもが2歳になるまで」とするべきだと言うこと。
この2つは同じように見えて全然違います。
「2年まで」というのは母親が2年間休むことを想定しています。
しかし、2年間の育休は長すぎます。
仕事上のキャリア構築をあきらめろと言っているのに等しいでしょう。
育休を延長するのであれば「子どもが2歳になるまで」として、その間の育休取得は夫婦でシェアをするという考え方で進めてほしいと思います。
ノルウェー、スウェーデン、ドイツなどでは10年以上前から、父親に一定の育児休暇を取得するよう割り当てる制度「パパ・クオーター制」が導入されています。
日本でもこれを機に、父親にも育休期間を割り当てて、父親が育休を取得した家庭には給付金を増額するなどの制度を設計するべき時ではないのでしょうか。
保育園の整備や、保育士の確保を後退させないこと
もう一つ重要なことは、1歳を過ぎても保育園に入れていない子どもは、たとえ親が育休の延長ができたとしても「待機児童」であると言う定義を変えてはいけないということです。
待機児童の増加に悩む自治体からは、「待機児童解消のため」に育休の延長を望む声が多い。
しかし、厚労省も発表しているように、育休延長の目的は「女性の離職を防ぐ」ためであり、「見かけ上」待機児童を減らすことではありません。
育休を延長させた結果、保育園の整備や保育士の労働条件の改善が後退するようでは本末転倒なのです。
育休の延長そのものは、「多様な働き方」につながる可能性もあり、決して悪いことではありません。
しかし、制度の設定には今後十分な議論が必要です。
父親の育休取得をどのように促すか、企業に対しては何を義務付けるのか、育休が延長された分の育休手当(育児休業給付金)の増加分の財源など、考えなければならないことはたくさんあります。
何よりも、多くの女性が安心して、そして納得して出産・子育てができ、仕事上もキャリアが分断されることなく活躍していかれるような社会制度でなければなりません。
それが、女性も男性も、満足感を感じながら生活をしていかれる社会の実現につながるのです。
(森 ゆき/キャリアコンサルタント・講師)