将来深刻化が予想される空き家問題
2015年の「空家等対策特別措置法」施行前から記事に取り上げられることが多くなった「空き家・実家」問題。
人口推計によりますと15年~20年後には、東京圏郊外でも現在の地方のような高齢化率になり、空き家の活用問題に直面するかもしれません。
少子高齢化の背景から、持ち家も不動産投資と同じように、取得時から出口戦略(売却)を考える必要がありそうです。
老後資金への活用や相続人継承も考えますと、まず売却可能であることがポイントになると思います。
持ち家取得時から売却時のことを考えることが必要に
将来の空き家対策を考えるには、現在の空き家問題を理解する必要があります。
考えられる要因を分類しますと下記項目でしょうか。
当然ながら各項目の問題が少ない程、空き家リスクが下がります。
① 利便性などの立地問題
② 老朽化、耐震性能、プランなどの建物問題
③ 接道、がけ、高低差、面積、間口などの敷地条件問題
④ 借地、共有などの権利問題
⑤ 生家、持ち家への愛着、処分に対する親戚への体面などの内部要因
⑥ 買い手が無く、更地化による固定資産税増税問題
⑦ 住宅取得の新築志向
このように空き家リスクには複数の要因が絡んでいますが、中でも最大要因は立地にあると思います。
さらに最近の立地問題を細分してみますと
・共働きの生活スタイル変化から、都心部への職住近接希望と既存郊外住宅地とのエリアミスマッチ。
・バブル後の都心居住推進政策により容積率緩和され、都心部にタワーマンションなどの分譲住宅供給拡大。
・2000年都市計画法改正の規制緩和から、自動車商圏の地方や都市郊外では、販売効率の良い市街化調整区域、都市計画区域内非線引きエリアへのデベロッパー選好により、時間と費用のかかる既住宅地の整備遅れ、空洞化。
などが考えられます。
住宅地拡散はインフラ整備、維持コストを増大させ、財政が厳しくなることは明らかです。
政府は2014年に都市再生特別措置法を改正し、市町村の立地適正化計画立案による「多極型コンパクトシティ化」へ大きく舵を切りました。「集住」がキーワードとなり、それを推進する自治体への補助金を厚くする政策です。
7月末現在、立案着手は289自治体にのぼっています。
立地選択にあたって着目する点は?
では、立地選択にあたってエリアの将来を想像するには、何に着目していけばよいでしょうか。
いくつか挙げてみます。( )内はその情報の入手先。
・自治体別将来人口推計から30代後半1次取得層や既存住宅供給者となる後期高齢者の変動を対象周辺と比較。(国立社会保障・人口問題研究所HP)
・ハザードマップから洪水、急傾斜地崩壊危険箇所などの災害リスクを確認。災害リスクエリアは居住誘導地域から除外可能性あり。(国交省ハザードマップポータルサイト)
・立地適正化計画取り組みに注目し、居住誘導地域となるエリアの情報収集。(国交省HP立地適正化制度、各自治体都市計画課)
・小中学校統廃合履歴や計画に着目。通学難エリアの住宅需要は低い。(各自治体教育委員会)
・エリア内高経年物件の価格確認。(不動産ポータルサイト、空き家バンク全国版HP来年度開設予定)
実家や持ち家が既に条件の厳しいエリアにある方は、早めの住替えを視野に入れておいた方が良いかもしれません。
今後も活用が難しい空き家が増えることを念頭に賢い持ち家取得を
最近「カフェに再生」「創業支援拠点化」など、空き家活用のトピック的な報道が増えました。
しかし、補助金頼みでは継続性が気になります。
空き家820万戸のうち、賃貸・別荘を除き、立地的にも活用可能な物件は意外と少なく国交省にて50万戸と推計されています。
空き家の賃貸化は、修繕コスト、空室リスクから1世帯のみの経営では難しいものがあり、まず売却検討が賢い選択になりそうです。
一方、政府は住宅要支援者への空き家活用を試行中ですが、活用条件に合わない物件は除却推進策が有効だと思います。
また、高経年分譲マンションの出口は区分所有法改正や、解体費用の制度構築がなされない場合、立地次第で戸建空き家より厳しくなるかもしれません。
賢い持ち家取得は将来の問題を少なくできます。
データを見ても、面積、性能面で持ち家は賃貸を上回り、さらに自分のライフスタイルの実現が可能です。
立地を含め「継承者へのプロデューサー」となる取得を目指されたら如何でしょうか?
(屋形 武史/住宅コンサルタント)