虫歯の重症化を避ける意味でも大人の歯科検診は重要
虫歯や歯周病、顎関節症など、お口の病気の大きな特徴の一つは、病気が進行しだした初期の段階では、痛みを感じず、自覚症状がないということです。
その為、気付かないうちに症状が悪化して、痛みが出だした時には、かなり重症化しているということが少なくありません。
重症化すると、健康な状態に回復するのが難しくなりますから、治療期間は長くなり、治療にかかる費用も高くなり、その間の心身的ストレスも増え、なおかつ予後(治療した結果が維持される程度)が悪い場合が多くなります。
この重症化を避ける意味でも、大人の歯科検診は重要だと言えます。
歯周病は糖尿病、心筋梗塞などの疾患にも悪影響を及ぼす
特に、成人してからは歯周病のリスクが高まってくる方が多く、日本人の85%が歯周病に罹患しているというデータもある程です。
しかも、その歯周病が糖尿病、心筋梗塞をはじめとする心臓疾患、アレルギーなどの慢性的な全身疾患等を引き起こし、治りにくくする要因になっていることが、学術的にも明らかになっています。
例えば、内科での糖尿病の治療に真面目に取り組んでいるにも関わらず、なかなか血糖値が下がらなかった方でも、歯周病の治療を併せて行うことで劇的に数値が改善したという報告が数多くあります。
良質な歯科検診を提供する歯医者の条件
では、良質な歯科検診をしてくれる歯医者さんの条件を何点か挙げてみましょう。
1. 全体的に詳細なレントゲン写真をとってくれる
初期の症状ほど目でみただけでは判別しにくいので、定期的にレントゲン写真を撮影すると有効です。
2. 歯周病検査で、一本一本の歯の周囲をくまなく探ってくれる
歯は360度骨に囲まれているので、全周をくまなくチェックすることが歯茎の異変を見逃さない為に有効です。
3. 全体的な咬み合わせを診てくれる。
咬み合わせが悪いことが原因になっている症状もたくさんあるので、全体的な咬み合わせの良否を判断してもらう必要があります。
歯型をとって模型を作った上で判断してもらえるのがベスト。
4. お口の中の実際の写真を撮って、見せてくれる。
百聞は一見に如かず。
最近は高性能の歯科用デジタルカメラや口腔内カメラがあるので、大きな画面で状態を見せてくれる歯科医院があります。
5. 検査結果を十分にわかりやすく説明してくれる。
どんなに精密に検査をしても、説明が不十分であったり、分かりにくかったりするとあまり意味がありません。
一生『自分の歯』で暮らすためにも大人の歯科検診を
人生80年と言われて久しく、昨今では100歳の大台に到達される方も沢山いらっしゃいます。
そんな長い人生を最後まで楽しみ、謳歌する為には、『自分の歯』をなるべく長くもたせたいものです。
「年をとったら入れ歯になる。」という誤解をしている方が沢山いらっしゃいますが、実は、それは大きな誤解。
問題を初期の段階で処置し、キチンと手入れすることで一生『自分の歯』で暮らすことはそんなに難しいことではありません。
上質な人生を送る為にも「大人の歯科検診」を、是非、お勧めします。
(諌山 正典/歯科医師)