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家庭裁判所が関与することにより児童虐待は改善されるのか

JIJICO 2017年1月3日 9時0分

児童虐待相談対応件数は25年間増加傾向に

児童虐待の相談対応件数は、統計を取り始めた平成2年度から現在に至るまで増加が続いており、平成26年度においては88,931件となっています。
虐待を受けた子どもに対しては、生命を守るという観点から児童相談所による一時保護が行われることがあります。
一時保護は保護者の同意を得ることが望ましいですが、緊急性を要するケース等は、行政権限により親子を引き離し児童相談所等で子どもを一時的に保護することもあります。
保護者の同意なく行われた一時保護が2ヶ月を超えて延長する場合、これまでは児童福祉審議会が延長の是非を審議してきました。
この審議の結果については事実上すべてが認められており、そのため審議会の在り方自体に疑問をもつ声も少なからず存在します。

一時保護について家庭裁判所が関与することに

そのような中、厚生労働省は保護者の同意がなく2ヵ月間を超える一時保護については家庭裁判所が関与し、継続の必要性等を審議する方向を固めました。
このことは子どもの虐待問題を好転させるのでしょうか。

まず、前提として考えなければならないのは、これら虐待に対する問題は「子どもの最善の利益」を踏まえた支援が求められることにあります。
「子どもの最善の利益」を踏まえた支援には様々な形がありますが、その1つとして家族の再統合があります。
家庭の再統合とは必ずしも親子が一緒に生活するものではなく、離れていても家族としてお互いに感じられるように導くことも含まれます。
そういった点で言うと、一時保護の目的は、決して保護者を排除することではありません。
家族の再統合のためには保護者の存在は不可欠であり、そのためには支援する側と保護者の間に信頼関係の構築も求められます。

これまで、どちらかというと行政権によって一時保護の是非が委ねられていたことに、司法権も加えた上で判断をするのは一つの方向性として望ましいと言えます。
しかし、本当に大切なことは保護者と公的機関が良好な関係を築き、子どもと共に家族の再統合を目指すことです。

保護者との信頼関係構築がより一層求められる

今後、一時保護の継続には家庭裁判所の審判が伴うケースも増え、保護の継続には法的根拠が備わることになります。
だからといって全ての保護者が納得をして支援に前向きになるとは限りません。

むしろ、審判の結果に納得のいかない保護者の気持ちを受け止め、時間をかけて再統合へと導いていくような支援が、これからはより一層求められるのではないでしょうか。
審判の結果を受入れられない保護者を公的機関が批判をし、関係がこじれ、家族の再統合がより困難になるようでは本末転倒です。

(中原 崇/社会福祉士)

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