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トランプ次期大統領の勝利は格差が原因?日本でも同じ現象は起きるのか

JIJICO 2017年1月6日 9時0分

マスメディアも予測しなかったトランプ大統領

マスメディアは、こぞってヒラリー氏の勝利を確信していましたが、「勝負は下駄を履くまでわからない」と言われるように、誰もが予測しなかった「逆転劇」が待ち受けていました。
このようなトランプ次期大統領誕生のウラには、「進み過ぎたグローバル化に反対し、拡大を続ける所得格差に不満を抱く、白人労働者層の存在がある」との指摘があります。

気になるトランプ次期大統領のポピュリズムな政治姿勢

社会が閉塞化すればするほど、ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)が頭をもたげると言われています。
トランプ次期大統領がどのような経済政策・外交政策・安全保障政策を採用するのかは、今のところ必ずしも明らかではありませんが、ひとつだけ鮮明なのは、反グローバリズムにもとづく排外主義的な政治姿勢です。
つまりは極端に「内向き」の政治姿勢であり、国民大衆の一面的な欲求に迎合し、国民大衆を扇動・操作することによって権力を獲得・維持するポピュリズムの典型と言ってもよいでしょう。

長期の政治空白を生みかねないアメリカ大統領選の問題点

そもそもアメリカ大統領選は、アメリカの建国の歴史にまで遡る民主主義の基盤でした。
しかし、駅馬車が航空機にとって替わられ、電信(電報)が電話やインターネットにとって替わられたこの時代には、必ずしも適合しない古めかしい選挙制度となっています。
確かにアメリカの国土は広大ですから、駅馬車の時代には長い長い選挙期間をかけて全国を遊説して歩くことが必要でした。
その名残は現在にも及んでおり、選挙戦は予備選・本選をはさんで10か月と言う長丁場で、実際の闘いは本選の2年前からすでに始まっていると言われます。
大富豪や有名政治家でなければ大統領選という「サバイバルレース」を勝ち抜けない理由がここにあります。

そして、アメリカ大統領は、憲法により「再選は1度だけ」と規定されているため、2期目の終了が近づくと大統領の影響力が激減し、多数の決定事項が先送りされるなど政治が停滞すると言われます。
このような状態を指して「レームダック・プレジデント(lame duck president)」と呼ばれていますが、その語源は「足の不自由なアヒル」です。2期目の大統領は4年の任期中、最初の2年間しか政治的影響力を発揮できないとされ、その理由は、最後の2年間は実質的に次期大統領の選挙選に突入してしまっているからです。

このように、現職大統領の「レームダック期間」が2年間にも及ぶこと、大統領選の期間が長過ぎること、気力・体力のみならず資金力及び組織力がないと勝ち抜けないことなどから、選挙選における政策論争がついつい「内向き」になってしまう傾向は否定できません。
「偉大なアメリカを取り戻す」というトランプ氏の最強とも言える「内向き」かつ「排外主義」的な政治姿勢が、最終的に「ホワイトハウスへの道」を開いたものと言えます。

日本でポピュリズムを扇動する首相は生まれるか?

さて、日本でも中間層が減少し、格差の拡大が著しくなっていると言われています。
そのため、ポピュリズムを扇動するような政治家が現れ、アメリカのような現象が起きるのではないかとの懸念が囁かれています。
しかし、アメリカの大統領選挙は、選挙人の選抜という間接的な手法ですが、結果として大統領を国民が選ぶというシステムを採用しているため、「人気投票」という側面が強いことは間違いありません。
これに対し、日本においては議院内閣制が採用され、議会内多数派(政権与党)から議会内選挙で首相が選ばれるシステムになっています。
そのため、ポピュリズムを扇動する政策を掲げる政治家が「人気投票」の結果、鳴り物入りで首相に就任するような現象は、まず起きないと言うことができるでしょう。

ただし、「民主主義は衆愚政治に通じる」との指摘があるように、かつてアドルフ・ヒトラーは、最終的には「選挙」という合法的な手段を使って政権を勝ち取り、絶対的独裁権力を手にした結果、民主主義は崩壊の道をたどりました。
民主主義が歴史的にみて最良の政治体制であることは間違いありませんが、「多数の民意」イコール「常に正しい」とは限らないという点には注意が必要です。

(藤本 尚道/弁護士)

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