相次ぐ高齢者ドライバーによる交通事故
昨年、高齢者ドライバーによる交通事故で登校中の児童が亡くなるなどの、痛ましい事故が相次ぎました。
高齢者ドライバーによる事故で特徴的なのが「操作ミス」と「事故のことをあまり覚えていない」ということです。
アクセルとブレーキの踏み間違えや注意力の低下は一般ドライバーでもあることですが、そのこと自体を覚えていないのが高齢者ドライバーの供述でよく出てくる言葉です。
そのような状態で運転をするなという意見が大半ですが、一方で、特に地方部では車がないと生活ができない人が多いのも現実です。
それではどのような対策が考えられるのでしょうか?
高齢者の免許更新を医師の判断だけに頼っていいのか
平成29年3月より75歳以上の高齢者が免許の更新をする際、医師の診断書が必要になります。
認知症があれば免許取り消しになるとのことですが、果たして医師が正確にその判断をできるかが疑問です。
現に要介護認定時の医師の意見書に限って言えば、本当にひどい意見書がたくさんあります。
まったく患者のことを見ていない医師が多い現実も考慮すべきです。
もちろん在宅専門医や高齢者をよく診ている素晴らしい医師もいます。
しかし、何でも医師の判断だけに頼るのは危険だと思います。
そこで介護側から高齢者ドライバーの問題を考えてみたいと思います。
高齢者ドライバー問題 解決に向けての提言
私が提案するのは以下の6個の案です。
1. 地域包括ケアシステムの一環として包括支援センターが中心となり、高齢者宅へ
個別訪問し、デイサービスの送迎者や施設の送迎者などを活用し、買い物やタクシーの代行をして、車が無くても安心して暮らせるようにする。
2. 訪問介護の生活支援の拡大をし、買い物同行や運転代行を使いやすくする。
3. ケアマネジャーや介護事業所から免許取り消しについて申請できる。
4. 訪問販売を拡充させる(助成金を出す)。
5. 過疎地では一定年齢に達したら高齢者集合住宅に転居させる。
6. タブレットを配布し、何でも購入でき届けてもらえる仕組みを作る。
介護の担い手が足りなくなると言われていますが、まだまだ介護事業者はたくさんあります。
介護保険外事業促進のためにも思い切った規制緩和は必要だと思います。
3番はよくある問題です。
「この人本当に車運転して大丈夫かな~」と思う人が運転していることがあります。
ご家族や我々介護事業者も免許の返納をお願いしますが、大丈夫の一点ばりだったり、車がなくなった分の生活の面倒見てくれるのかと言われたりして、困ったこともあります。
5番と6番は現実味がない話のように感じるかもしれません。
しかし特に5番に関しては今後の超高齢社会の日本では本気になって検討してもいいテーマだと思います。
地方部や過疎地域まで介護保険制度を平等に提供するには限界が来ています。
土地や家に思い出やこだわりがあるのは十分理解していますが、それほど離れていない地域でなら可能ではないでしょうか。
介護で一番問題なのは個別対応が多すぎて人海戦術だということです。
特に過疎地域では介護の人手不足が深刻です。
今後はより効率的な介護保険制度にしなければ財政がもちません。
高齢者ドライバー問題は日本の介護問題をより明確にしました。
極論を言えば、本人の人権か社会の安全かの選択です。
今後の超高齢社会を乗り切るには思い切ったかじ取りが必要です。
簡単に解決する問題ではありませんが、今こそ色々な業界での議論が必要だと思います。
(松長根 幸治/介護経営コンサルタント)