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混合介護の容認は介護職員の処遇改善につながるか?

JIJICO 2017年1月26日 9時0分

混合介護とは?

東京都豊島区は、国家戦略特区の制度を活用し、混合介護が行えるよう関係機関と調整を始める報道がありました。
この「混合介護」とは、どういったものなのでしょうか?

高齢者に介護が必要になった時、介護保険制度を利用して介護を受けますが、保険の対象となるサービスが厳密に定められています。
保険の対象となるのは、介護が必要な高齢者が、自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスに限られています。
例えば、ホームヘルパーが高齢者の自宅へ訪問してサービスを行う訪問介護では、食事や入浴などの介助、日常生活を営むために最低限必要な、掃除・洗濯・買い物などを行います。
介護保険制度は社会保険方式であり、サービスの内容は最低限必要に限られているので、日常生活の範囲を超えるもの、宗教や趣味に関するものなどは、サービスの対象外になります。

例えば、大掃除、庭の手入れ、ペットの世話、理美容院への付き添い、墓参りなどは対象外とされています。
身の回りの様々なことが意外と対象外になると感じられます。
そのため、高齢者が介護保険の対象外となるサービスを受けたい場合は、改めて対象外のサービスをホームヘルパーなどの事業所と契約をし、全額自己負担で(介護保険サービスは1又は2割負担が原則)、通常の保険対象となるサービス以外の時間で、ホームヘルパーなどに改めて来て行ってもらうことになります。
このような介護保険の対象となるサービスと対象外のサービスを組み合わせ、一体的にサービスを受けることができるのが、混合介護です。

高齢者における混合介護のメリット・デメリット

混合介護のメリットとして、保険の対象となるサービスのホームヘルパーが、対象外のサービスまで担ってもらえるので、気心の知った関係の中で気づかいをする必要がない、事業所を探し直すことがない、利用料が一括して請求される点があります。
また、連続した時間帯でサービスを受けることができ、利便性が高まるでしょう。

デメリットとしては、保険の対象となるサービスと対象外のサービスが一体的に行われることで、保険対象のサービスがあいまいになること、理解や認知機能が低下している高齢者に、保険の対象か対象でないかを理解した上でサービスの契約ができるか、サービスを受ける際に、保険の対象と対象外の違いに誤解が生じないかの点が懸念されます。

介護職員の待遇の改善、生産性の引き上げにつながるのか?

混合介護では、介護事業者にとってサービスを提供する機会が増え、収益が上がることで、介護職員の待遇が改善されることが期待されます。
また、一体的にサービスを提供するため、利用者宅までの移動などが効率化され、職員の生産性が上がるでしょう。
現在でも、保険対象外のサービスへの高齢者のニーズは高く、契約に基づいた保険の対象外のサービスを行っている事業所があり、業績を伸ばしている民間事業者があります。

一方、介護業界では、介護職員の離職率が高く、慢性的な人材不足の状況があります。
また、平成29年度末までに、全市町村で「介護予防・日常生活支援総合事業」(「総合事業」と呼ばれています)の導入が始まります。
総合事業とは、軽度の生活支援などのサービスは、全国統一の介護保険制度ではなく、市町村が主体の事業にシフトをし、民間事業者やNPO、地域住民が提供するサービスを受けるように制度が変わります。
総合事業では、社会保障費を抑制する観点がありますが、人材が不足している専門性の高い介護職員を、専門的な介護業務に重点化することで、人材不足を解消する狙いもあります。

このような介護職員の人材不足がある現状、介護サービスの枠組みが大きく変わる中で、サービスを受ける高齢者や担い手の介護職員に対し、今後どのように混合介護が機能をしていくのか、注目をしておきましょう。

(山本 勝之/社会保険労務士)

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