学童保育の待機児童数、4年生以上で増加傾向
学童保育の待機児童数が増加しています。
特に4~6年生の待機児童数の増加が大きく、保育所に続く「第2の待機児童問題」として注目されています。
今なぜ小学校高学年の待機児童数が増加しているのでしょうか。
厚生労働省は1月、学童クラブ(正式名称:放課後児童クラブ)の状況を同省Webサイトで発表しました。
それによれば、学童クラブの待機児童数は全国で17,203人と過去最多となっています。
学年別の内訳をみると、1~3年生9,957人(前年比743人減)、4~6年生7,246人(前年比1,013人増)となっており、高学年の待機児童数が増加しています。
この理由を3点挙げて解説いたします。
高学年の待機児童増、制度上の2つの理由
高学年の待機児童数増加の理由の1点目は、制度の変更によって学童クラブの対象者が変わったことが挙げられます。
平成27年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」により、それまで対象が「おおむね10歳未満」(3年生)とされていたのが全学年に拡大されました。
4年生以降も学童クラブを利用したいとの保護者からの要望は以前からありましたが、対象者となったことで、その要望の数が表面化したのです。
理由の2点目は、学童クラブの入園審査基準の特徴にあります。
学童クラブの入園審査は、毎年度、児童ごとに新規におこなわれ、低学年から優先的に入園をさせる自治体が多いのです。
その結果、学童クラブでは、上の学年になるほど審査に通りにくくなります。
全国で最も待機児童数の多い東京都では、1,2年生だけでほぼ満員になってしまい、3年生ですら学童クラブに入れない地域もあります。
当然、4年生以上は、特別な事情のある児童以外、入園は難しいという状況になっています。
共働き家庭の「一人っ子の増加」も一因
高学年の待機児童数増加の理由の3点目として、共働き家庭の「一人っ子の増加」による学童クラブ残留希望者の増加を挙げたいと思います。
例えば子どもが複数いる家庭の場合、上の子が4年生になる頃はまだ、親が下の子のための時短勤務で17時頃に帰宅できるような家庭は多くあります。
学校が終わるのが15時30分ころなので、上の子が放課後に一人で過ごすのは2時間程度。
友達と遊んだり習い事に行ったりしていればすぐに経ってしまいます。
そして末の子が4年生になった時はどうかというと、親の帰りが遅くなっても兄や姉がいます。
一人ではないので寂しくありませんし、親も上の子と一緒なら安心というわけです。
このように、子どもが2人以上いる家庭では、高学年になってからの学童クラブは必要でない場合が多いのです。
しかし、一人っ子の家庭はそうはいきません。
親がフルタイム勤務なら、残業をしなくても帰りは19時頃になります。
4年生の子どもが毎日19時まで一人で留守番をすると思うと、切ない気持ちになる親は多いでしょう。
防犯上の心配もあります。
学童クラブで、友達や職員の大人たちと一緒に過ごしていたほうが安心と考えるのは、当然でしょう。
子どもが4年生に進級したとたんに預け先が無くなってしまい、早い時間に帰宅することが難しい親が仕事を辞めざるをえない家庭が少なくありません。
まさに「第2の待機児童問題」です。
子ども達の安全を確保し、保護者が安心して仕事を続けていかれるよう、自治体には、保育園だけでなく学童クラブの増設にも力を入れていってほしいと思います。
そして企業には、子どもを持つ社員に対して多様な働き方ができるように工夫をしてほしいのです。
時短勤務が必要な時期は、子どもが赤ん坊の時だけではありません。
社員が必要な時期に自分の働き方を柔軟に選択できるような環境整備をお願いしたいと思います。
(森 ゆき/キャリアコンサルタント・講師)