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学校教育IT化推進のために必要とされる教師のITリテラシーとは?

JIJICO 2017年4月10日 12時0分

学校におけるIT教育と企業の情報化

学校でのIT教育が進んでいます。
校内には無線LAN環境が整備され、各教室に電子黒板が設置されている学校も増えており、教師や生徒はタブレット端末を使用して授業を行う光景も珍しくありません。
こうしたハード面の整備は進む一方でソフト面、すなわちITを活用した授業内容はどうでしょうか。
中には、これまでのノートと鉛筆がタブレットなどに置き換わっただけの授業が行われているかもしれません。

企業や組織の情報化でも第一段階として、「紙を電子化する」「情報システムでデータを処理する」ことが行われますが、このレベルでは目に見える効果は限定的です。
「電子化された情報を活用する」段階に進んで初めて効果が現れます。
学校教育でも同様な事象が起きていないでしょうか。
ノートと鉛筆がタブレットなどに置き換わったIT教育の効果は高くないでしょう。
従来の「暗記すべき答えを教える」授業の内容はGoogle検索すれば獲得できます。
こうして獲得した情報を生徒間で共有し、様々な課題に適用して解決するプロセスを学ぶことがIT教育の強みではないかと考えます。

教師のITリテラシーはどこまで必要か

このようなIT教育を実践する中で、教える立場にある教師の負担は大きくなっています。
2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されることから、さらに負担が増えることが想像されます。
財政的に余裕のある自治体や私立の学校はIT専門家を活用して対処できるのでしょうが、そうではない公立の学校などでは教師自身がある程度のスキルを身に付ける必要に迫られています。

しかし、教師がいわゆるIT企業の従業員レベルのIT知識を求められるのか、という考えには疑問を感じます。

教師に求められるITスキルやITリテラシーはどのようなものでしょうか。
授業で使用する機器やソフトウェアの基本的な使い方は必要ですが、専門家にしかわからないようなテクニックは必要ありません。
その点では、企業における情報システムの定着化を図る活動が参考になるかもしれません。
新しい情報システムを導入する際、システム部門の担当者が技術的な話に終始すると現場の従業員はこれまでと異なる業務への変更に抵抗し、また慣れないシステム操作に混乱してしまい、結果として利用されない情報システムとなるケースが少なくありません。
スムーズな業務移行を図るには技術的な話は必要ありません。
むしろ業務面で、手順の簡易化や時間短縮などの効果を啓蒙し、浸透させることが重要です。
学校教育でも同様に、IT教育は情報機器やソフトウェアの使い方ではなく、ITを使って何をするのか、そのために必要な情報や技術は何かを考え、習得すべきものが必要とされるITリテラシーだと考えます。

学校のIT教育はスキル習得だけではない

以上から、学校でのIT教育は企業等でのIT研修と大きく異なることが分かります。
例えばプログラミング教育を例にすると、IT研修では正しくプログラムを作成するためのスキルやテクニックを教え込むことに終始します。
IT教育では正しいプログラムを作成するためにネット上から様々な知識を獲得し、試行錯誤を繰り返すというプロセスが重要ではないでしょうか。
むしろ、教師も一緒になって考えることも必要だと考えます。

また、コンピューター犯罪では昨年の佐賀県で発生した不正アクセス事件など、実行犯の低年齢化が進んでいます。
こうした若年層にサイバーセキュリティを任せたら、という意見もありましたが、筆者は暴論としか考えられません。
この事件では実行犯の少年が在校生から校内無線LANのアクセス情報やファイル配置等の情報を入手していました。
こうした情報を外部に漏らさないといった、倫理面も含めた教育もIT教育に求められていると考えられます。

(金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント)

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