「くるみんマーク」認定が厳格化されます
みなさんは「くるみんマーク」認定企業というものをご存知でしょうか。
政府の少子化に対する施策である次世代育成支援対策推進法に基づき、厚生労働大臣が一定の基準を満たした企業の申請に対して、「子育てサポート企業」として認定するものです。
この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」で、厚労省によれば平成28年12月末時点で、2,634社が認定を受けているとのことです。
本年4月より、この「くるみんマーク」認定の基準が厳格化されるとの発表がありました。
昨年末、広告業界大手である株式会社電通職員の過労自殺という痛ましい事件が大きく取りざたされましたが、この電通も「くるみんマーク」認定を受けていました。
子育てをサポートする企業として認定されていながら、実質は過労自殺を招くほどの長時間労働があったということで、電通は事件後に認定を辞退しています。
この過労自殺の影響を含め、近年長時間労働に対する監視の目が厳しくなってきています。
厚労省の「くるみんマーク」認定も、その流れを受けて「月平均の残業60時間以上の正社員ゼロ」などといった条件を追加し、その認定基準が厳格化されることが決定しました。
飾りものから実質化へ
労働人口が減っている中で、企業の人材確保問題は年々厳しさを増しています。
また、女性の社会進出の速度は増し、男女を問わず、以前よりワークライフバランスを重視する働き方が珍しくなくなりました。
「くるみんマーク」認定を受けるメリットは、採用活動などで“働きやすい職場”としてアピールすることができる点です。
ただ、電通の件からも浮き彫りになった通り、これまでの認定基準が甘かったことから、その企業の実質的な働きやすさ、子育てのしやすさを十分反映したものではありませんでした。
とりあえず制度があるから認定を受けておこうといった「飾りもの」の体があったことは否めません。
この度の認定基準の厳格化により、認定マークが「飾りもの」から「実質化」できるかが今後の注目点でしょう。
働き方を見直す分岐点に
価値観の多様化や少子化など様々な理由から、働き方もこれまで通りでは上手くいかなくなってきています。
いくら仕事にやりがいはあっても、一昔前のような労働時間を度外視した働き方では、能力ある従業員を確保することは困難になっているのです。
また、今後も深刻化する絶対的な労働力不足のため、子育てや介護をしながら働く人をいかにサポートしつつ戦力とするかや、外国人労働力の受け入れなど、これまで日本が直面したことのない課題が山積しています。
今回の「くるみんマーク」認定基準の厳格化は、一種の指標です。
企業も生き残っていくために、いかに貴重な人的資源を確保し、育てていくかを考えなおす分岐点にきています。
(大竹 光明/社会保険労務士)