働き方改革が労働者に与える影響
安倍政権が一億総活躍社会の実現に向けて最も力を入れているといってよい「働き方改革」。
その働き方改革は、労働生産性を改善するための最良の手段として位置づけられています。
具体的な中身として、「同一労働同一賃金」「最低賃金の引き上げ」「長時間労働の是正」などのキーワードが並んでいます。
これらは労働者の多くの方に歓迎されるものではありますが、同時に、厳しくなるであろう雇用環境にも目を向ける必要があります。
なぜなら、企業には、労働生産性の向上にむけてなお一層の努力が求められ、労働者一人一人に「どれだけ生産性をあげているか」という視点で評価を行うことに、今後より力を入れていくからです。
今後労働者に必要となるスキルと心構えとは
では、今後労働生産性がより求められる雇用環境の中、労働者はどのようなスキルや心構えが必要になってくるのでしょうか。
私は、以下の3つが必要だと考えます。
①物事を論理的に考え伝えることができるスキル。
②コスト意識を持つこと。
③お互い様の意識を持つこと。
1、物事を論理的に考え伝えることのできるスキル
報連相という言葉がありますが、これは仕事の進め方そのものです。
会社という組織で労働生産性をあげていくためには、個人レベルでの仕事の進め方(=報連相)をまずはしっかり行っていく必要があり、その組織として情報を共有化することが重要になってきます。
報連相をしっかり行うためには、物事を論理的に考え伝えるスキルがベースになってきます。
そのスキルを身に付けるためには、やはり読書が最適でしょう。
この場合、小説ではなく、仕事に関連する専門書を熟読するなどの方が効果的だと思います。
もちろん一冊読めばよいというわけではなく、読書を習慣化することが大切です。
2、コスト意識を持つ
会社は、評価制度の整備や人材教育等を通じて長時間労働の是正や労働者のモチベーションアップを行っていきます。
しかしながら、同時に、労働者側もコスト意識を持つことが求められます。
この仕事にどれくらい時間がかかっているのか、この投資に対して何年で回収できるのか、等です。
より効率が求められてきます。
残業代がほしいから、といった理由は論外ですが、仕事によっては残業や長時間労働も時には必要な場合もあるでしょう。
その際も、残業代分の成果があがっているか、といった視点は必要です。
3、お互いさまの意識をもつ
最後は、お互いさまの意識をもつこと。
組織として労働生産性を向上させるためには、職場環境を良くすることも大切です。
職場は自分一人ではなく、例えば介護や育児、病気、障害などの事情を抱えた方もいます。
育児休業を申し出た労働者に対して嫌がらせを行う等のセクハラ・マタハラ事例がありましたが、もしかしたら今度は自分が親の介護で休まざるを得なくなることも考えられます。
まさにお互いさまです。
逆に、育児休業で休む側も、休んでいる間誰かに負担がかかっているかもしれないという想像をすれば、周りの方への配慮の仕方、態度が変わってくるはずです。
そのようなお互いさまの意識が浸透している職場の雰囲気が悪いわけありません。
効率が重視される時代ではありますが、自分の権利を振りかざしたり、自分だけが早く仕事が終わればいい、という考えの人ではなく、お互いさま意識をもって周りの方とのコミュニケーションをとることができる人材が今後求められるでしょう。
(三谷 文夫/社会保険労務士)