外反母趾で悩む方は相変わらず多い
外反母趾で悩まれる方から、原因や痛みへの対処に関するお問い合わせや相談が相変わらず多いです。
外反母趾の原因の多くは普段の生活習慣の中に潜んでいるのですが、あまり認識されていない現状をとても残念に思います。
一般的には、足の健康に対する関心が、まだまだ低いという現実があるからだろうと思います。
足は体を支え、自立を支える土台なのですが、靴に大きな関心が向かう一方で、足には無関心が定着しているようです。
子供に柔らかい靴底のスニーカーを履かせてはいけないワケ
20年ほど前、私が師事したドイツ人のマイスターからとても衝撃的なレクチャーを受けた事があります。
それは、「成長期の子供には柔らかい靴底のスニーカーを履かせないように」という内容でした。
「えっ?どうして?」と大変驚きました。
子供には遊びやすいスニーカーを履かせるものだと思っていたのですから。
けれどもマイスター曰く、「靴底の柔らかいスニーカーを履かせていると、子供の足の感覚器官が刺激されなくなるので、神経の発達を阻害し、足で踏ん張ってバランスよく体を支える機能が発育しない。」と言うのです。
「靴底の柔らかいスニーカーは路面の状況を靴自体のクッション構造で吸収してしまうので、成長期の足裏に感覚情報を伝えなくなり、感覚器官としての足が育たない。」というのがその大きな理由でした。
「靴自体の過度なクッションに邪魔されること無く、足を適度に刺激して足のクッション機能を発育させる事が成長期の健全な体育だ。」という内容には天と地がひっくり返るようなインパクトを受けました。
外反母趾の原因
外反母趾の原因は「開張足」にあります。
「開張足」とは足指の踏ん張る力が低下して、足の親指と小指の付け根を結ぶ線上に形成されていた「足の横アーチ」が維持出来なくなって扁平になり、足の横幅が広がる症状の事です。
「開張足」になると、足指の先が浮き上がる浮指になったり、足の指のつけ根が靴底や床に押し付けられて痛みを感じたり、足裏に角質やタコが生じたりする原因にもなります。
そして、足の横幅が広がるにつれ、靴先に閉じ込められた足指は横幅に対して逆に窄まるような状況になってしまいます。
足の親指は地面を蹴り出して歩を進めて推進力をサポートする大事な器官です。
ですから「開張足」の状態で歩き続ければ、親指で蹴り出す動作が正しく作用せず、親指の付け根を基点として「くの字」に関節の角度を曲げる作用になってしまうのです。
こうして外反母趾が徐々に進行していきます。
外反母趾を予防改善するための靴選び
子供の頃からの生活習慣や環境要因で弱体化した現代人の足は、靴の影響を受け易くなっているのかもしれません。
ですから、ファッションと靴との関係が強く意識される女性にとっては、とても過酷な環境と言えるのではないでしょうか?
なぜなら、学生靴としてのローファーを履き始める時期や就職でパンプスを履き始める時期を境にして、外反母趾等の足のトラブルを意識される女性が多くなるという現実があるからです。
足の健康を予防改善するには、靴底が堅牢に作られたウォーキングシューズを選択して、足の指先から靴先の間に1cm程の余裕寸を確保出来る適正サイズを選び、靴先から靴紐をしっかり締めて余裕寸を維持するように履いて歩く事が大事です。
靴の中でも足指が自然に動く環境を整え、歩く行為が運動効果となって足指が踏ん張る筋力の鍛錬になり、足の横アーチを維持する筋力を取り戻して「開帳足」を改善することが基本です。
また、パンプスを選ぶ際にはなるべく3cm以内のヒール高で、靴先が丸みを帯びたデザインで、甲ベルトやネックベルトの調整で足先が靴先に突っ込まないように出来る仕様のパンプスを選択しましょう。
この様にアドバイスすると、自由に自分好みのデザインでファッションとしての靴を楽しむことが制限されてしまうと嫌がる方も多いでしょうが、靴を用途に応じて履き分けるスキルを身に付ける事も、足の健康にとって何よりも大切な事だと思います。
(小黒 健二/シューフィッター)