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アルコール依存症患者を抱える家族は病気にどう向き合っていくべきか

JIJICO 2017年4月24日 12時0分

アルコール依存症への基本的な理解

まず、アルコール依存症という病気について理解する必要があります。この病気の特長として、患者本人が「自分がアルコール依存症である」ということを自覚しないという点が挙げられます。自分で飲む量をコントロールできると思っているので、人の話を聞きません。

辛いことですが自分で病気だと認めざるをえなくなるまで、思い通りに飲んでもらうしかありません。飲んで問題がおきて苦い経験を繰り返さなければ「自分はお酒をほどほどに控えることが出来ない」「もう断酒しかない」ということが理解できないのです。

また、残念ながら命に係わる状態にならなければ行動に移せない、という人が多いことも事実です。

アルコール依存症が疑われる兆候

お酒を飲むことが優先され続けると、お酒への精神依存がみられるようになります。お酒が切れると軽い離脱症状(微熱、悪寒、寝汗、下痢、不眠)が出始めますが、体調不良や風邪と思い込み、自覚しない人が多くいます。次第に、お酒が原因となるトラブル、不注意、判断ミス、遅刻、欠勤、病気、けが、飲酒運転などが起き始め、本人もお酒を控えようと考えますが、なかなかうまくいきません。

そのまま飲酒を続けるうちに、さらに家庭内でのトラブルも起こり始めます。お酒を飲んでいる後ろめたさで家族に対して攻撃的になり、隠れて飲んだり、飲むための嘘も増えます。お酒の量をコントロールしようとしても出来なくなり、アルコールが切れると不安やうつ状態に襲われるので、飲まずにはいられなくなるのです。

連続飲酒発作、離脱症状による幻覚、肝臓やその他の疾患の悪化で、日常生活や仕事が困難になっていきます。

もちろん、一番辛いのは患者本人ではありますが、それを支える家族にも心身共に相当な負担がかかり、苦しい思いを強いられます。もしも、家族がアルコール依存症になってしまったら、家族はどう対処すればよいのでしょうか。

家族は「見守る」ことが大切

お酒を飲ませないことに力を注いでも、効果のないことにエネルギーを使うことになるばかりか、事態をこじらせたり、自分自身が疲れてしまいます。

アルコール依存症患者は、どんなことをしても飲もうとするため、隠れて飲んだり、飲むために暴れたりします。無理に飲ませないようにすると、神経を逆なでして逆効果になります。また、飲酒したかを逐一チェックして、飲んだことを責めるのもNGです。「嫌な事を言われたから」と人のせいにしてお酒を飲む口実にし、悪循環を引き起こします。

断酒しようとしていても、監視の目で見られることになると、ストレスや孤独感を感じ、アルコールに手を出してしまうので、家族は病気を理解してじっと見守ることが必要です。

本人にアルコール依存症という病気であることを自覚してもらうことは大事です。患者が起こした問題に対して、家族が助けるのではなく、本人に問題を自覚してもらうのです。

病気については、家族が勉強して伝えても良いですし、関連する本を読んでもらったり、病院などで専門家から話してもらうのも良いでしょう。アルコール依存症を隠そうとして家族だけで抱え込まず、保健所、精神保健福祉センターに相談したり、専門医療を受けられるところを探すのも良いでしょう。

患者の言動に振り回されないように

しかし、長年アルコール依存患者を抱えていると、家族は精神的に疲れ切ってしまいます。そのため正しい知識を学ぶと同時に家族自身の心のケアも必要となります。専門医療機関の家族教室や、自助グループの家族会、セミナーなどに参加して、自分の被害者意識や不信感を克服しながら仲間の中で学びましょう。世間の目を気にするのではなく、ありのままの自分で安心できる人間関係を築くことが大切です。

また、アルコール依存症になると、体だけでなく心も病んでしまいます。人に迷惑をかけず、自立した生活を送りたいと断酒の決意を見せた矢先に、お酒を飲んで攻撃的な言動を繰り返し、開き直って飲酒したことを正当化する……。

家族の多くは、アルコール依存症患者のそのような姿を見て混乱し、絶望を感じます。しかし、それらの患者の言動に振り回される必要はありません。病気が言わせている、やらせている言動に対しては、相手にせず、巻き込まれないようにするのが大切です。病気を治すには、正常な部分と病気の部分を区別して、見極めることが必要です。

責めたり非難したり、説教しても、患者の状況は決して良くなりません。人間関係が悪くなり、さらに追い込んでしまう場合もあります。何よりも、変えることのできない現状に、不安や怒り、恨みが募り、家族の側が心身ともに疲弊してしまうのです。

最後に、アルコール依存症患者のご家族へ

自分の身を守るためには、相手を認めることも必要です。自分のために、アルコール依存症者はどんな気持ちなのだろうと、相手の立場で考えてみましょう。不安を抱えたままでいるだけでは何も状況は変わりませんので、アルコール依存症について勉強したり、家族会に出席するなどして、これから先を良くするために、自分で行動してみてください。

自分の人生で一番大切なのは自分自身です。病気になった家族でもなく、環境でもありません。過去や環境は変えられませんが、自分自身のこれからの人生は自分で選ぶことが出来ます。幸せを感じるのも、恨んで生活するのも自分次第です。どんな環境の中でも生きがいを見つけることは可能です。

大切なのは、どう考え、どう行動するかです。自分が生きがいのある人生を送れるかどうかは、考え方や行動の仕方で決まります。誰の為でもなく、自分自身のためにあきらめないで勇気を持って行動してください。

アルコール依存症は「回復する病気」です。早期に治療するほど失うものが少なく、回復も容易です。大切なことは「治したいと思う心」「専門家の助け」「回復した人との交流」「前向きな努力を続けること」。本人が助けを求めない以上、家族が周囲に適切な介入を求め、専門家や専門機関のサポートをうまく利用することが重要だと思います。

(飯塚 和美/心理カウンセラー)

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