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日常生活における身体活動でもたらされる健康効果

JIJICO 2017年5月22日 9時0分

坂道を歩くことで糖尿病になるリスクが軽減

地域の坂の傾きが約1.5度上がると、住民が中等度の糖尿病になるリスクが18%低下するとの調査結果を、東京医科歯科大などの研究チームが発表しました。
このことより、「日常的に坂を歩くことで、運動と同じ効果が得られている可能性がある」と分析しています。
「家の周囲に坂がないのだけれど・・・」と落ち込まれた皆様。安心してください。
坂が無くても、日常生活の中で運動と同じ様な効果が得られるものが他にもあります。

運動と同じ様な効果が得られる生活活動とは?

日本人の運動量が減ってきていることは皆様も実感されているのではないでしょうか。
実際に、15歳以上の1日の歩数の平均値が平成9年から平成21年にかけて、男性では8,202歩から7,243歩、女性では7,282歩から6,431歩に減少しています。
それぞれ約1000歩ずつ減っているわけですが、これは1日約10分の身体活動時間の減少を意味しています。

身体活動とは、動かずにじっとしている状態よりも多くのエネルギーを使う全ての動作を指します。
この身体活動には、日常生活における家事、通勤、通学などの「生活活動」と、スポーツやジムなどの目的をもって実施される「運動」の2つに分けられます。
はじめにご紹介した報告は、坂道を歩くという「生活活動」が「運動」と同じ様な効果を持っているということを意味しています。

「運動」が元気で長生きをもたらすことは、多くの研究で明らかになってきています。
車の普及が運動不足の要因とも言われていますが、実際に発展途上国において自動車を所有している人の肥満の発症率は3倍に、2型糖尿病の発症率は2.5倍に上昇することが明らかになっています。
また、毎日5分~10分のジョギングでも、心血管疾患や死亡のリスクが3~5割減ると言われています。
さらには1週間に1日平均7分未満のランニングでも死亡リスクを減少できることも報告されています。
最近では、運動が認知症の予防に非常に有効であることも明らかになっています。
それでもまだまだ「運動」は難しいと思っている方も多いかもしれません。
そこで注目したいのが、「生活活動」による身体活動です。

誰でも出来る身近な生活活動で健康を増進!

前回「血糖値スパイク」についての記事で少し触れましたが、ニート:NEAT(non-exercise activity thermogenesis)という言葉をご存じでしょうか。
これは、運動ではない日常生活における身体活動によるエネルギー消費のことを意味しています。

肥満者と非肥満者を比べると、肥満者は歩行なども含めた立位による活動時間が、平均で1日約150分も少ないとも言われています。
テレビを観る時間が多い人や座っている時間が長い人の方が、健康寿命が短くなるということも報告されています。
つまり、忙しかったり、時間がなかったり、面倒だからという理由で「運動」を始められない方は、「生活活動」を増やすことでも充分に健康は増進できるということです。

 積極的に階段を使う
 ゴミを投げないで歩いて捨てに行く
 いつもより少し遠回りして家に帰る
 たまには掃除をしてみる
 手紙を出しに郵便ポストまで歩いて行く
 テレビを観ながら軽くストレッチや筋トレをする
 テレビのリモコンを少し遠くに置く
 1時間テレビを観たら少し休憩して部屋をうろうろする
 ラジオ体操、テレビ体操をやってみる
 貧乏ゆすりをする!?
などなど。
何でもよいので、少しでも身体を動かすことを意識することから始めてみませんか。
将来のご自身のために。

(松田 友和/医師)

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