Infoseek 楽天

電車の中で痴漢を疑われたとき、どうすべきか?

JIJICO 2017年6月4日 9時0分

痴漢行為について

電車などの公共の乗り物等で、正当理由なく、他人の身体に触れて不安にさせるような行為は、都道府県の迷惑防止条例違反に問われますし、暴行脅迫をしてわいせつな行為をした場合には刑法の強制わいせつ罪に問われます。
このような痴漢行為が電車内で行われて、被害者や目撃者がその場で声を上げて発覚することがあります。

一方で、痴漢行為が実際には存在せず、被害者の勘違いであったり、悪質なのは示談金目的で痴漢被害を主張する場合もあり得ます。
いずれにせよ痴漢被害が主張されて身に覚えのない人が加害者と指さされた場合、その人は、無実の罪を着せられそうになっている混乱とともに、逮捕されて職や家族を失ってしまうことになるのではないかという恐怖を覚えるのではないかと思います。

犯罪の嫌疑を受けた場合

痴漢の問題に限ったことではないですが、やってもいない犯罪の嫌疑を掛けられた場合は、一呼吸して少しでも落ち着きましょう。
私を含め弁護士であっても、無実の罪を着せられそうな状況になったらパニックになるはずです。
そのような危機的状況のときこそ、おかしな行動を取ってしまう前に、1拍置くべきです。
そのような状況では、最善の選択をするだけの冷静さを取り戻すのは通常は困難ですから、最悪の手だけは取らないようにしましょう。

痴漢えん罪の場合は、逃走すること、特に線路に逃げることは最悪手です。
逃走することで、犯人である疑いをますます強めてしまいます。
駅員や他の乗客もいる中での逃走は困難ですし、防犯カメラや改札のIC履歴などから逃走できても後から特定される可能性もあります。
ましてや、線路に逃げれば電車に轢かれたり、地下鉄等では感電することもありますので、死傷する危険があります。
また、痴漢については無実でも、線路に立ち入ることで、業務妨害罪や建造物侵入罪、鉄道営業法違反などの犯罪をおかすことになりかねません。
逃亡する際に止めようとした駅員等に暴行を加えたとされれば暴行罪となってしまいます。
逃亡に起因して鉄道会社等に損害を生じさせたとなれば損害賠償請求を受けるかもしれません。

逮捕されれば長期間の身柄拘束を受けて仕事や家族を失いかねないから逃亡した方が良いというような話がネットで流れていたようです。
確かに、長期間の身柄拘束で自白を迫るいわゆる人質司法は改善されたとはいえません。
しかし、痴漢事件で逮捕(最長72時間の拘束)されたとしても、その後に裁判所が勾留(原則10日間、最大10日間の延長の拘束)を認める可能性は以前より下がっていると言われています。
したがって、命がけで線路等に逃亡することを勧める説の前提が違ってきています。

痴漢を疑われた時どのような対処をすべきか

被害を主張している人や駅員には、氏名や連絡先を告げて、穏便にその場を離れることができれば良いです。
被害者が急いでいたり、犯人であるという主張に自信が弱ければ、その場を離れることを認めてくれるかもしれません。
ただ、そのようなことは実際には期待できないでしょう。
離れることを認めてもらえないままその場から離れようとして、被害者等に捕まえられて現行犯逮捕とされるかもしれません。
離れさえてもらえない場合、自ら駅員を呼んだり110番通報して、痴漢だと絡まれて困っている等と主張する対応もあり得ます。
ただ、痴漢の疑いをかけられるという非日常の状況ですから、興奮してしまって適切に警察に説明できないかもしれません。

弁護士への連絡が最善

痴漢に限らず犯罪行為を疑われた場合、弁護士の知人がいる人や、経営者で顧問弁護士を頼れる人は、まずは弁護士に連絡するのが最善でしょう。
知っている弁護士がいない人は、万一通勤途中に弁護士に連絡したい状況になることを想定して、法律事務所をあらかじめ検索して探しておいてはいかがでしょうか。
また、痴漢えん罪に対応する保険も販売されているので、心配なら加入しておかれてはいかがでしょう。
後になって現行犯逮捕されていたと扱われないために、駅事務所には行かずに降りたホームで弁護士を待ちましょう。

逮捕されたら

もし逮捕された場合は、弁護士を呼んでもらって助言を受けることが最優先です。
弁護士に会うまでは、警察官にペラペラしゃべってしまわないようにします。
人によっては、やっていないことを分かってもらうために適当なことを話してしまうこともありますから、後でつじつまの合わないことになってしまうと供述が余計に信用されなくなってしまいます。
やっていない、身に覚えが無いと分かっているのは自分だけです。
取調べをする警察官には、言い訳をしているに過ぎない犯人と思われていると考えて下さい。説明すれば警察官は分かってくれるなどと期待しないことです。

(林 朋寛/弁護士)

この記事の関連ニュース