民泊新法案が衆議院本会議で可決
国内外からの観光客の宿泊に対する需要に的確に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し,もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする住宅宿泊事業法案(いわゆる「民泊新法案」)が,今月1日に衆議院本会議で可決された模様です。
民泊の解禁で近隣トラブルなどが増加する懸念もありますが,この点をどのように克服しているのかについて解説してみます。
民泊新法で近隣トラブルは回避されるのか?
まず,民泊新法で予定されている住宅宿泊事業者の営業形態には,住宅の所有者自らがそこに居住して宿泊管理業務を行うものと,所有者が不在で住宅宿泊管理業者にこれを委託するものがありますが,いずれにしても,年間の宿泊日数の上限が180日と定められていて,地域に実情に応じるべく条例でこれよりも厳しい制限を設けることも可能となっております(18条)。
また,近隣トラブルをできるだけ防止するために,住宅宿泊事業者ないし住宅宿泊管理業者は,宿泊者に対し,法令で定められた騒音の防止のために配慮すべき事項その他の当該住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関して必要な事項を(外国人観光客に対しては外国語を用いて)説明しなければならないと規定されるとともに(9条,36条),周辺地域の住民からの苦情及び問合せに対しても,適切かつ迅速に処理しなければならないと規定されています(10条,36条)。
民泊により近隣トラブルが生じているにもかかわらず,これに適切かつ迅速に対処されない場合には,監督官庁による業務改善命令(15条,41条),業務停止・廃止命令(16条),登録取消命令(42条)が出されることになっていますし,命令違反に対する刑事罰も定められているところです。
近隣トラブルを防止できるか否かは運用次第
民泊が急増する外国人観光客の受け皿になっていることを無視し得ない一方で,近隣トラブルの防止も図らなければならないため,民泊新法はこれらの規定を盛り込むことで旅館業法による規制を緩和しようとした法律といえますが,監督官庁による監督がまともに行われるのか,また,捜査機関においても近隣トラブルは民事であるなどとして不介入の姿勢を取るのではないかといった心配もないではありません。
結局のところ,民泊新法により民泊が解禁されたとしても,近隣トラブルをうまく防止できるか否かは,その運用にかかっているといえるでしょう。
(田沢 剛/弁護士)