週明けの仕事のストレスは心臓に負荷
最近のニュースで、「勤労者は、月曜午前は他の曜日と比べ心臓にかかる負荷が高まっていることが分かり、それは休み明けの仕事のストレスが原因とみられることから、月曜日の仕事量を減らすことが提言されている(愛知県の旭労災病院の研究チームによる)」というのがありました。
ストレスの健康への悪影響は各種研究で認められている
ちなみにストレスが健康に悪影響を及ぼすということは各種研究で既に認められており、心臓疾患についてもその研究があります。
例えば、カナダの西オンタリオ大学の研究者は、慢性的なストレスが心臓発作を引き起こすきっかけになりうることをバイオマーカーを用いて示しています。
ストレスが健康に及ぼす経緯は複雑
なお、このストレスと健康の関係について更に言えば、その関係は直接的なものではなく、いわゆるストレス因と個人の特性(性格・遺伝要因・生育環境など)、更には対処法がからんで反応がでてくると考えられています。
一つの例として、ストレスそのものよりも「ストレスを害とみなす見方」が心身の病気の引き起こしやすさにつながっている、との近年の研究があります(米国ウイスコンシン大学など)。
これを心臓疾患についていえば、「ストレスが健康に大きな影響があると考えている人はそう考えていない人よりも心臓発作のリスクが2倍高い」、との英国での研究(7200人を18年間追跡調査した結果)があります。
そして研究者たちは、人の主観が健康に大きく影響すると述べています。
しかし専門家は同時に、ストレスが心臓を含む身体に与える影響の仕組みは非常に複雑であり、まだ十分には解明されていないと慎重な姿勢でいます。
社会的なストレスマネジメントの視点でどう対応すべきか
以上、ストレスが健康に及ぼす経緯については複雑な面がありますが、それはそれとして、この問題を社会的なストレスマネジメントの視点からとらえ、社会としてどう対応していけばいいかを考えてみたいと思います。
ストレスへの対処を社会としてできる支援からとらえるとき、以下の3種類があります。
1. 物理的支援(経済面・時間面など)
2. 情報的支援(知識・教育)
3. 心理的(情緒的)支援(カウンセリングなど)
このようにストレスへの対処の社会的支援の仕方はいろいろあり、最初のニュースにあった「月曜日の仕事量を減らす」というのは、ストレス因の物理的な量を減らすという意味で物理的支援にあたるといえます。
特に仕事量などからくる慢性のストレスは、災害などからの急性のストレスに比べ程度そのものは強くはなくても、その状態が長く持続することで健康にはより悪影響があると考えられており、その対処法が十分でないとうつや不安につながりやすいとの研究があります。
したがって、慢性的なストレスの一因となりうる仕事量を減らす(特に週明け)というのは、具体的な提言として意味ある方策と言えます。
ただし、先に述べたように何をストレスと受け取るかには個人差も大きいとの研究結果もあることから、ストレス軽減のためには物理的支援でよしとせず、加えて特に心理的支援もおろそかにしないことが大事と考えます。
(村田 晃/心理学博士・臨床心理士)