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『中学生のスポーツ嫌いを半減』国の目標が波紋 

JIJICO 2017年6月14日 9時0分

スポーツ庁の『スポーツ嫌いの中学生を半分に減らす』が波紋に

先日スポーツ庁が掲げた『スポーツが嫌いな中学生を現在の半分に減らす』と言う目標に対し一部で反発の声が上がっているようです。
『嫌いなままじゃだめですか?』と。
その原因について分かりやすく言えば,両者のスポーツに対するイメージの相違にあるのではないでしょうか。
反発している人は、スポーツを運動と同じと考えている可能性があります。
まず、ほとんどの人に認識されていないのが、スポーツと運動の違いです。
簡単に言うと、スポーツは余暇活動であり、運動は生命活動であるということです。

スポーツの定義

スポーツとは、ある一定のルールに則って競い合うものということで定義されます。
一般的にスポーツと言えば野球やサッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上等の競技種目等がイメージされますが、一定のルールに則って競いあえばスポーツに成りえます。
某自動車会社のCMに、○○をスポーツにする『スポーツ嫌いをスポーツにする』等の文言も聞かれました。
実際に街や海岸等のゴミを拾うことも『スポーツゴミ拾い』とスポーツになっていますし、2020年にスポーツの祭典と言われる東京オリンピックが開催されますが、その昔のオリンピックの中には絵画や音楽と言った芸術等も種目として存在していたくらいなのですから。

運動の定義

一方、運動の定義は、健康のために身体を動かす事になります。
運動は生命活動において、生涯に渡り必要とされており、特に発育発達期の子ども達にとっては骨や筋肉等の体の成育だけでなく脳の成長や機能にも影響を与えています。
将来大人になった時の生きる力を育む上でも、学力と同等に考えなければいけない時代に入ってきているといえます。

最近、若い人を中心に運動不足による健康障害を訴える人の増加があります。
最新のニュースでは、若い女性の間で『ロコモ症候群』が増加傾向にあるということです。
『ロコモ症候群』とは座る・立つ・歩くと言う日常動作が困難になってくるもので、慢性的な運動不足が原因と言われ、筋肉を使う頻度が少ないために筋肉や関節が使いづらくなるだけでなく骨粗鬆症などにも影響を与えます。
かつて、患者のほとんどは高齢者でしたが、最近は若い人の間にも増えてきているということです。
このような事態にならないためにも、若いころから継続的に運動をすることは重要ですが、スポーツを通じて運動することが誰にとっても一番馴染みやすいという側面もあります。

ちなみに、国がスポーツ・運動を奨励する背景には高齢化が進む社会において医療費負担増による肥大化する社会福祉費の削減も求められているということもあるのです。

スポーツが嫌いな人の持つマイナスなイメージ

スポーツが嫌いになった人たちは、学校体育で出来なかったことで恥ずかしい経験をしたり、上手く出来るように技術の習得のための練習を強いられたりして精神的や肉体的なダメージを負った経験があるのではないでしょうか?
そのような人たちにとって、スポーツ嫌いを減らすという掛け声は違和感があり、反発を招いてしまったのではないかと考えられます。

スポーツ庁の本来の真意はスポーツを好きになることは、将来にわたっても良いコトですよ、ということだと思います。
特に、発育発達期の中学生にとっては精神的、肉体的にもスポーツを好きになることは有益であり、生涯にわたってスポーツと関わる素地をつくるためにも奨励したかったのですが、上手く真意を伝えられなかったと言うことです。

アクティブチャイルドプログラム

因みに今回掲げた目標実現の為の施策の一つとして今年度、平成29年度より未就学児や小学校低学年を対象に、運動好きの子ども達を育てる事を目的とする『アクティブチャイルドプログラム』(運動あそび)の普及活動を全国で始めています。
嗜好が確立される前の幼児期に、楽しく身体を動かす遊びを多く体験させ、その後も様々な運動環境を整えて、スポーツが得意不得意に関わらず子ども達が身体を動かす機会を増やし学校体育を魅力あるものにすることで、スポーツ嫌いを減らすことにつながるのではないかと思われます。

最後に、過度な運動量となるスポーツ練習は、その後のスポーツ離れにも繋がるだけでなく、怪我や故障等の健康被害等も招く恐れもあり、本来の目的に対し本末転倒にもなりかねません。
重要なのは運動の質と量、そして出来る出来ないに関わらず、身体を動かす楽しさを伝えられる指導力であるということが言えます。

(山崎 憲治/『子どもの運動と学習の関係』に関する教育アドバイザー)

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