80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が半数超えに
80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が半数を超えたことが、厚生労働省の調査で分かったそうです。健康やQOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活品質)の向上に関心が高まった証拠だと考えて良いと思います。
人間はいつか死を迎えるのがさだめですが、死ぬまでは生きているわけですから、ギリギリまで質の高い人生を送りたいものです。その為に、お口の健康状態を保つことは大変有意義なことで、その気になれば可能なことでもあります。
お口は他の臓器と違って、自分の意志と行動によって、良好な状態を保てる可能性の高い所だからです。では、その為に大切なことを何点か述べてみましょう。
お口を清潔に!
何よりも一番大切なことは、お口を清潔保つこと。清潔にとは、お口の中の隅から隅までの歯垢(プラーク)を一日に一回、確実に壊すことです。
歯垢(プラーク)とは、実は約1000分の1ミリの細菌が寄り集まった集合体なのです。その歯垢を取り除く為の掃除がキチンとできるように、自分のお口の清掃法を歯科衛生士さんに習い、技術を習得して、それを毎日習慣化してやり続けることが重要です。
かみ合わせを正常に!
虫歯や歯周病になるのは、歯垢(プラーク)だけが原因ではありません。実はかみ合わせのバランスが崩れていても、虫歯や歯周病になりやすくなるのです。
それだけでなく、咬み合わせが悪いと、上手に食事が摂れなかったり、歯がすり減ったり、歯並びが悪くなったり、顎関節に異常をきたしたり、とにかく色んな悪影響がお口の内外に出てきます。
それを防ぐ為にも、かみ合わせをキチンと診てもらえる歯科医院にかかって、かみ合わせのバランスを常にチェックしておかれることをお勧めします。
堅いものを咬み過ぎず、でも回数多く咬んで!
歯も長く使い続けると消耗します。いくら歯が丈夫だからといって、極端に堅いものばかりを食べていると、当然、歯は傷みやすくなってきます。
しかし、咬むという行為は、頬っぺたの筋肉を動かして、脳の血流量を増やす働きをするとも言われています。だから、同じご飯を食べる時も、一口30回くらい咀嚼するようにするのが、お口の筋肉の運動にもなり、脳の血流も増えるので、大変お勧めです。
顔の凝りをほぐすために体操とストレッチを!
実は顔の筋肉も肩などと同じように凝るということをご存知でしょうか?筋肉は同じ向きの動きばかりを繰り返すと凝り固まる性質があります。だから、お口の筋肉も噛みしめるばかりではなく、時には大きくお口を開けて、筋繊維をストレッチする必要があるのです。
また、すでに凝ってしまっている部位は、筋繊維にそってさするようにマッサージするのも凝りの解消に効果的です。
免疫力を高める為に、全身の健康にも気を付けて!
お口の中は、実は、全身の中で最も細菌の質が豊富で、量も多い場所だということを知っている人は意外に少ないのが現実です。そんな口の中は免疫系が最も働いている場所でもあり、常に目に見えない細菌と免疫細胞の攻防が繰り広げられています。
その為、全身の健康状態が悪くなり、免疫力が落ちると、それまで抑え込まれていたお口の中の病気が表に出て来ることも少なくありません。
やはり、お口も全身の一部です。80歳で20本の歯を残す為には、全身レベルの健康にも気を配り、良質な睡眠、良質な食事、適度な運動、メンタルヘルスの充実を心がけて、健やかな毎日をお過ごしになることが大事かと思われます。
(諌山 正典/歯科医師)