投資に興味を持つ若い女性が増加
若い女性にもっと投資に興味を持ってもらおうとする試みが増えているそうです。
日経新聞でも、東京証券取引所や金融庁が企画するマネーイベントの様子や兜町の金運スポットを巡るナイトツアーも活況だったなどと報道しています。
筆者はファイナンシャルプランナーとして日々お客様の資産形成アドバイスを行う仕事をしておりますが、確かに「お金の知識を持ちたい」という若い女性は増えていると感じます。
金融機関主催の女性向けイベントにスピーカーとして登壇させていただくケースも多く、間違いなく金融機関も若い女性を取り込もうと積極的に取り組んでいます。
お金の知識を持つことは、性別にかかわらず誰にとっても大切なことです。
特に高度成長期時代の日本のように、「真面目に仕事をしていれば国や会社がなんとかしてくれる」時代ではありませんから、すべての人に資産形成の必要性が高まっています。
特に出産というライフイベントがある女性は、自分の人生設計をするにあたり、時間的な制約、体力的な制約、社会的な制約を受けることも多く、よりシビアに将来にわたるお金とのつきあい方に関心を持つ傾向にあるのかもしれません。
投資セミナーで気をつけたいこと
もちろん学ぶ姿勢は素晴らしいことですが、ファイナンシャルプランナーという立場で女性向けイベントの広告を見る限り、「危うさ」を感じるところがあります。
例えば、国の年金制度は少子高齢化で先細りするから、投資を通じてお金を増やそうとすることは概ね正しい行動ですが、儲かる株の見つけ方、為替で上手に儲ける方法、不動産投資で安心老後などという文言を見かけると、方法論だけが先行してしまい、むしろ勉強熱心な女性たちがカモにされているのではないかと不安に思ってしまうのです。
資産運用で最も大切なこととは?
資産運用に最も大切なこと、それは運用に回せるお金を長期的にかつ継続的に捻出することです。
日々の生活を支えながら、将来への仕送りに回せるお金を生み出す、つまり自らに投資をして「稼げる自分で居続けること」です。
また稼げる自分でいることは、老後の年金額を増やすことに直結します。
国の年金制度は、現役世代の保険料が高齢者の年金財源となる「賦課方式」を取っています。
マクロで見ると少子高齢化で年金保険料と年金給付額のバランスが悪くなり将来に不安を感じるというのは全うな反応ですが、個々の年金額を考えると現役時代の働き方が高齢期の年金額を決める唯一のファクターであることを知るべきです。
国民年金は、1年加入することで約2万円の終身年金を確保できます。20歳から60歳までの40年間、国民年金保険料を支払えば、2万円x40年となり老齢基礎年金は65歳から約80万円終身で受け取れます。この金額は物価などの状況に応じて見直しされていきますが、公的年金の原理原則的な理解であれば、この位ざっくりでも問題ないでしょう。
この老齢基礎年金の他、会社員であれば老齢厚生年金が上乗せで支給されます。
この厚生年金の計算式をものすごく単純化させると年収x0.55%x厚生年金加入年数となります。
0.55%というのは、厚生労働省が定めた給付乗率を単純化させたものです。
つまり、年収があがれば老齢厚生年金額が増えるし、長く勤めれば老齢厚生年金額が増える仕組みです。
若い時の自分の稼ぎ方が将来の自分の生活を支えるのです。
またその収入があるからこそ、適切なリスクをとりながら長期で資産形成に取り組めるのです。
人生を豊かにするために
今の職場は給与も増えないし、なんとか投資でお金を増やしたいな~
特にこれといったスキルもないし、年齢的に転職も限界だから投資でもしようかな~
ノルマがきつくて体力的にも限界、不動産を買えば家賃収入で仕事をやめられるかな~
すべての人がそうとは決して思いませんが、時折聞こえてくるそのような声に不安を感じます。
投資で人生をダメにしてしまう人はたくさんいますが、投資だけで人生を豊かにできる人はいません。
人生を豊かにするのは、明日は今日よりももっと豊かになりたいという地道な努力です。順番を間違うことなく、上手にお金とつきあって欲しいと願っています。
(山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー)