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がんで亡くなる人を減らすために国がすべきこととは?

JIJICO 2017年7月10日 12時0分

厚労省が新たにまとめた「がん対策推進基本計画」案


現代は二人に一人が癌に罹患すると言われる時代であり、がんで亡くなる人を減らすためには、予防と早期発見が有効であるのは言うまでもありません。

厚生労働省の協議会が今後6年間を対象期間とする新たな「がん対策推進基本計画」の案をまとめました。現行の計画では2005年からの10年間で75歳未満のがん死亡率を20%減らす目標を掲げ、これに基づき、がん治療拠点病院の整備など医療の充実を進めてきました。

死亡率の低下や5年生存率の向上などの成果は上がっている様ですが、がん死亡率は16%程度の減少にとどまり、当然のことながら目標には届きませんでした。喫煙率やがん検診の受診率が想定通り改善されなかったことなどが原因と考えているようです。

がん死亡率を減らすために国は真摯に取り組んできたのか?

この10年間で国や役所はお決まりの様に目標だけは立てるもののそれに対して本当に実効性のあることを積極的に推進していたかどうかとなると甚だ疑問を感じざるを得ません。その典型的な例が今年度から始まった胃がん検診への内視鏡検査の導入です。

国は以前から内視鏡検査では胃がんの死亡率は減少出来ないと発表し続けておりましたが、我々内視鏡世代で医療に携わって来た者としては胃透視で早期胃がんが見つかることそのものがまれであるということは常々実感しておりました。胃透視を実施している検診機関や関連施設などとの兼ね合いもあり、なかなか胃透視から内視鏡検査に移行出来なかった経緯も分からなくはありませんが、遅きに失した感は否めません。

ここに至った最大の理由は恐らくは2013年2月から始まったピロリ菌陽性胃炎に対する除菌治療の開始です。これに関してはまず、内視鏡検査を施行し、内視鏡観察でピロリ菌の存在が疑われれば血液検査等でピロリ菌の有無を確認し、存在が確定すれば除菌治療へという流れとなっており、胃透視でピロリ菌感染が疑われても除菌治療に移行することは出来ないのです。

これではがん予防を掲げている国の政策との整合性が取れませんのでようやく重い腰を上げたというのが実状ではないでしょうか。

国の受動喫煙対策はあまりにも不十分

さらに今回からがん予防のための重点項目として掲げたのがたばこ対策ですが、これとても2020年の東京オリンピックに向けた受動喫煙対策として、先日まで国会で議論がなされていましたが、与党自民党からも反対意見が出るありさまで法律の制定には至りませんでした。

国民の代表とも言える国会議員が国民の健康を守るための法律の成立に異議を唱えるなどということは意味不明であり、今回は厚生労働省の思惑との間に深い溝があることが露呈した感じです。こんなことでは厚労省が飲食店などでの「受動喫煙ゼロ」の目標をたてても実効性に関しては甚だ疑問であり、今後早急にがん予防の観点からも改めて受動喫煙に対する法整備を急ぐ必要があると考えられます。

早期発見のためには国が主導しての検診受診率向上が不可欠

がんの早期発見には検診受診率向上が不可欠なのは論を待ちませんが、現状は男性40%台、女性30%台で、国が目標とする50%には到底及びません。これも国や地方自治体がただお題目だけで検診受診率向上をなどと言ってもそれに対してインセンティブをつけるなどの目新しい事がない限りはいつまで経っても到達出来ないのでは?と思ってしまいます。

結局はがん予防にはかなりの予算がかかるわけですが、なるべく医療関連の予算を出したくない財務省との綱引きに負け続けている厚労省が画期的な案を出せないでいるのが一番の問題なのかも?知れませんし、未だかつてない超高齢化社会に向けて将来を見据えてお題目だけではない本当に実効性のあるがん予防対策やきめ細かい政策が真に必要とされているのではないでしょうか?

(佐藤 浩明/消化器内科専門医)

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