相続対策で賃貸アパート経営を選ぶケースが増加
土地を持っている人に対し、低金利時代に利回りを確保できる運用ができ、相続時の節税対策もできるとして賃貸アパートやマンションをすすめるケースが増えてきています。
国土交通省より発表されている2016年の貸家の着工戸数を見てみると、アパートやマンションなどの貸家は42万戸を越え、前年比11.4%増、2年連続の増加でした。昨年は着工戸数の4割以上は貸家だったという数字が出ています。
大家さんになるメリットは税金を少なくできる圧縮効果
背景には、2015年より改正された相続税の対策があります。基礎控除額が4割カットされたことにより、相続税が掛かる対象の財産の金額が増えたのです。
ただ、ご相続時に現金はそのままの額面で評価されますが、賃貸用の建物にすることで相続税の評価額を25%ほどに圧縮することができます。例えば1億円を現金で持っている方が、賃貸用の物件に変えたら、2500万円の評価になります。これは、相続税対策を考える人にとっては魅力的な方法に映ります。
さらに借金をして(資産)-(負債)で相続税対象財産金額を減らすのです。この借金は家賃収入がありますので、家賃収入で借金を返済していければ、負担もないはず。そういうストーリーで「大家さん」となることを検討される方が増えているようです。
賃貸アパート経営の問題点
しかし、家賃が想定通りに行かず、国民生活センターなどに多数相談が寄せられています。
そもそも日本は人口が減少している国です。人が減っているのに、住む部屋を増やせば、新しいところに人は流れ、築年数の経過した物件に住む人を探すのは難しくなってくるのは想像に難くありません。
では、土地を売却して現金にすれば空室リスクを避けられるのではないか?という考えも浮かびますが、相続税の支払いは現金であれば簡単ですが、負担増を覚悟しなければなりません。
家族信託(R)は築いた財産を守るための管理と相続対策の救世主
不動産は管理の手間はありますが、節税効果はあります。特に、90歳まで生きる人が女性で2人に1人、男性は4人に1人の時代です。お年を召して判断能力が衰えたり認知症などになる不安はご本人のみならず、家族全体で抱えている方も多いことでしょう。
そこで最近は「家族信託」を検討される方も増えてきました。これは、所有者はそのままに、管理を子供世代に託し、30年間が期限ですが相続方法も決めておくことができる方法です。
法人化を検討される方も多いですが、法人の維持にはメンテナンスコストが思った以上に高額になることや、非上場企業では財務状況が良いと相続税が高額になってくることなどが懸念されます。
「信託」はまだ日本では馴染みのない仕組みで難しいと思われる方も多いです。ファイナンシャルプランナーや司法書士などにご相談されると良いでしょう。
(杉山 夏子/ファイナンシャルプランナー)