奨学金給付条件大幅緩和が進学率をさらに高めることに
文部科学省の発表で今年の大学進学率は52.6%と過去最高とのことです。その背景には、景気回復が要因として挙げられています。
確かに、景気の回復によって、大学進学に関わる費用を負担できる世帯が増えていることも、大学進学率上昇の一要因でしょう。大学進学には、大きな出費が伴うことは周知のことでしょう。まして、遠方の大学へ通うために一人暮らしを始めたり、私立大学への進学を決めたりすると、さらに大きな出費が伴うことになります。
しかし、昨年から、学生支援機構による、第一種奨学金(無利子貸与型奨学金)の給付条件が大きく緩和されたため、奨学金を借りれば、学費の高い私立大学でも通わせても良いだろうと考える世帯が増加しているのが実情ではないでしょうか。
事実、昨年度の学生支援機構第一種奨学金(無利子貸与型奨学金)への申請者が急増しています。そのため、緩和された要件を満たしているにも関わらず、国の予算不足を原因として、約24,000人が給付を認められませんでした。このような、奨学金の給付希望者の殺到は、大きな借金をするリスクを負ってでも、大学への進学を希望する傾向の表れだと言えます。
さらに、2018年からは、返済義務のない「給付型奨学金」の実施も決まっています。昨今の大学進学率の増加傾向に、拍車をかけることになるのではないでしょうか。では、今年度の大学選びは、どのように考えていけば良いのでしょうか。
進学動機を明確に持ち、行きたい大学を決めておくことが重要
アナタ(アナタのお子様)にとっての大学進学の目的は何でしょうか。「進学を希望する大学でしか学べない専門的な学問・研究があるから」「医師・薬剤師・司法試験合格・教員免許・看護師など、資格を取りたいから」など、明確な目的持って大学選びができていますか。
大学進学を希望する高校3年生の中には「短大や専門学校ではなく、自分の成績で合格できそうな大学に、とりあえず進学する」、「推薦入試で内定が出たので、とりあえず大学には行く」という、消極的な理由で大学進学を決める生徒がいます。私見ですが、大学進学率を押し上げているのは、これらのような、受験競争がほぼない大学への進学者が増えているのも一因かもしれません。
現在の大学入試では、受験者が殺到する人気の大学と、大学側が積極的に生徒を獲得して、ほぼ無試験でも合格できる大学の二極化が進んでいます。大学進学率が増加する事は、自分の受験予定大学の入試倍率に直接的な影響が出る訳ではないと考えて良いです。むしろ、受験動向にはその他の要因が大きな影響を及ぼすものです。
「都心私大の定員増加制限」「新設学部の認可」など最新トレンドを注視
今年度に大学受験を控える受験生が、最も注視しておくべきことは「都心私大の定員増加制限」と「新設学部・学科の認可問題」です。
文部科学省から、来年度から、東京23区内にキャンパスを置く私立大学の定員増が認められないことが、発表されています。本年度は、直接の影響は無いはずですが、該当する大学は、受験倍率の増加が懸念されます。
また、新設学部の認可は大きな影響を及ぼすと留意しておくべきです。特に本年度は、獣医学部の新設が大きな話題になっています。獣医学部への進学希望者にとっては、どこの大学を受験する場合でも、獣医学部新設が認可されるか否かにかかわらず、大きな影響が出るだろうと懸念しています。
行きたい大学が決まっている受験生にとっては、自分の受験大学の直近の入試動向データを知っておくことはとても有用です。入学試験に向けたテスト対策も重要です。それと同じように、各大学のWebページや大学受験情報サイトから、過去の入試データを入手し、動向を正確に把握することも重要です。
(加藤 哲也/塾講師、大学受験ストラテジスト)