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観光渋滞解消とAI活用 AIと人間との関係はどうなるか

JIJICO 2017年9月6日 7時30分

AIを活用して観光地の渋滞を解消

先月、国土交通省は観光地で人工知能(AI)を活用した渋滞対策の社会実験を始めることを発表しました。全国で「観光立国」に向けた活動が行われる一方で、観光地周辺では交通集中による渋滞が増加しており、こうした観光渋滞は観光客にとって最も不満に感じる事項となっています。

このため、国土交通省では、観光地周辺の渋滞を解消し、回遊性が高く、円滑な移動が可能な魅力ある観光地の創造するため、ICTやAI等を活用したエリア観光渋滞対策の実験を推進する「観光交通イノベーション地域」を公募しました。

実験では料金収受に加えて走行履歴収集も行うETC2.0、街頭に設置した高度化光ビーコンやAIカメラなどで収集した人や車の通行状況データをAIが学習・分析し、渋滞発生を予測します。その予測結果を自治体や警察などで共有し、渋滞解消につなげる仕組みです。公募の募集はすでに終了し、9月中に実験地域を選定する予定です。

AIと日常生活

近年、AIの利活用に関するニュースが溢れています。上記の観光渋滞対策は一例であり、AIの活用はこれまでのIT化による定型業務の代替だけでなく、複雑な非定型業務や手仕事業務も代替することが期待されています。

AIという言葉自体は1950年代からありましたが、よく知られるようになったのは将棋の電王戦やGoogleのAlphaGoなど、ボードゲームの世界です。AIは既に様々な商品やサービスに組み込まれ、日常生活の中で利活用されています。例えば、Googleなどの検索エンジン、Apple「Siri」などの音声応答アプリケーション、ロボット掃除機、などです。

現在、世界中で研究されている自動走行車もAIが不可欠です。現在、AIの活用によって大きな社会変革が起きようとしています。身の回りの多くの製品がAIを搭載し、自律して動作することで日常生活はさらに便利になります。AIの普及は少子高齢化、地方創生、財政赤字等、日本が抱える様々な課題を解決する可能性を秘めています。AI導入による人手不足解消、自動走行システムによる地方在住者や高齢者へのモビリティ確保、AIによる医療診断を活用した健康寿命の延伸と医療費抑制、等の施策が検討されています。

AI活用による人間の役割とシンギュラリティ

一方で、行き過ぎたAI活用は人間にとって脅威だとする意見も少なくありません。その代表は、人間の仕事がAIに奪われる、という意見です。数年前に発表された研究結果では、労働人口の半分近くの職業や職種がAIに代わられる、とされています。その延長上にAIが人間の能力を超えるシンギュラリティが起こり、人間はAIに支配される時代が来る、という意見もあります。

こうした意見に対して、個人的には楽観視しています。確かにAIは人間よりも何万倍、何十万倍もの情報を高速で処理できるため、業務上のプレーヤーとしては太刀打ちできなくなります。人間の役割は個々の作業実施ではなく、中長期的かつ大局的な判断を行い、AIの行動を管理する監督者にシフトするでしょう。

また、過去の技術革新と同様、奪われる仕事もあれば新しく生まれる仕事もあります。上記の悲観論は今の社会を前提にしているため、AI活用によって大きく変革する将来社会にそのまま当てはめることはできません。もし、人間がAIに支配される時代が来るとすれば、便利だからと言ってAIに任せきりになる人間の怠惰によって引き起こされるのだと考えます。

(金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント)

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