子どもの精神的なプレッシャーを物語る数字
子どものいじめ・不登校などの問題がクローズアップされ、日々のニュースでも目に触れることが多い昨今。平成29年度版自殺対策白書によると、15歳~19歳の死因第一位が「自殺」でその割合は36.6%と、かなりを占めています。また平成19年以降の原因・動機別の自殺の状況を見ますと、「学校問題」が毎年300件前後で、平成28年には319件にのぼっています。
実際にこの数字を見てしまうと、より身につまされ、真剣に向き合う必要を感じざるを得ません。そして、1年の中で18歳以下の自殺がもっとも多い日が9月1日です。この日は他の日と比べて2.6倍と断トツで多く、ここから見えてくるものがありそうです。
夏休みも終わり、ほとんどの学校で二学期が始まる日がなぜ、こうも子どもに負担を与えるのでしょうか。白書からは、夏休み明けで生活環境が大きく変わるこの時期だからこその、精神的プレッシャーの影響が書かれています。学校に慣れることもなく常に負担を感じていた子どもにとって、またあの日々が始まるのは恐怖でしかないのでしょう。家と学校以外に自分の居場所がなく、視野が狭くなってしまいどこにも逃げ場がないと思い込んでしまうのは、大変危険だと言えます。
手を差し伸べたいサイン
子どもだけが抱え込んでしまわないように周囲の大人ができることは必ずあります。特に夏休みの後半から、子どもを注意深く観察することで見えてくるものがあります。
例えば、歯磨きをしない、服装に無頓着になる、髪が乱れていても気にしないなど自分のことを大切にしなくなるのは何らかのサインが出ている証拠です。その延長として、一切外出をしたがらない、友達との連絡も行わない、新学期が始まる前なのに学校のことを聞いても気のない反応をするようなことが続くようであれば、手を指し伸ばさなければなりません。
また、そういった子どもほど生活リズムも安定していない場合が多いのです。特に夏休み中など長期の休み中に乱れたリズムを元に戻せていないのです。実は、この生活リズムの乱れは、不登校など様々な問題につながっていく可能性が高いと言われています。不登校の生徒が学校を休みはじめるのは、7月~9月が最も多いのです。
まずは、就寝や起床、食事の時間をキチンと決めて十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送ることから、夏休み明けへの対策を始めることが基本なのです。
「どうすることもできない」という思い込みには
ただ、そうは言っても子どもの心理として、「どうすることもできない」ような絶望感や、「誰も助けてくれない」と思い込んでしまう孤独感、そういった感情の状態が続いているのにもかかわらず、外に助けを求めることができないものです。さらには「唐突に危険行動を起こす」衝動性にかられ、最悪の選択をすることにつながることだってあります。
日頃から「辛いことがあっても、一瞬思いとどまれば、その苦しい体験が後の人生の大きな糧になること」を伝え、しっかりと向き合い、抱きしめ、「どんなことがあったとしてもあなたのことが好き」「大切に思っている」と愛情を言葉にすることこそ、親にできることではないでしょうか。
もはや子どもだけの問題ではありません。親も一緒になり生活環境から、あらゆる選択肢、違った価値観、多様なものの見方で見つめることが求められます。子どもが死にたいほど辛いのなら学校には行かなくても良い。罪悪感を軽くし、逃げ道を作ってあげる。しっかりと子どもを見つめたうえで一緒に具体的な行動を起こしていきましょう。子どもの安全こそが第一なのです。
(田中 正徳/次世代教育プランナー)