仕事中のタバコ休憩に対する厳しい目
2020年の東京オリンピック開催が決まり、いわゆる“おもてなし”を実現するため完全禁煙スペースをさらに増やす方向に世の中は動いているようです。愛煙家にはますます厳しい社会になってきました。日本たばこ産業株式会社の「2017年全国たばこ喫煙者率調査」によれば、喫煙者の割合は男性喫煙率が83.7%だった昭和41年をピークに下がり続け、現在の男性の平均喫煙率は28.2%、女性は9.0%だそうです。
さて、喫煙者が勤務時間中に何気なくタバコを吸うために職場を離れる行為について、皆さんはどのようにお感じでしょうか。タバコを吸う人からすれば、ほんの数分程度の息抜きであって、お手洗いに行くようなものかもしれません。しかし吸わない人からすれば、休憩時間でもないのに仕事を勝手に離れる行為だと感じてしまいます。
男性喫煙率が80%を超え、誰もがタバコを吸う時代であればタバコ休憩もありだったかもしれませんが、今はそうではなくなったようです。
タバコを吸わない社員の有休を増やす「スモ休」
今年9月より、東京に本社を構えるウェブマーケティング会社の株式会社ピアラでは、タバコを吸わない社員の有給休暇を増やす「スモ休」を導入しました。非喫煙者である社員から「タバコを吸うために休憩している社員と比べると労働時間に差があるのではないか。」との指摘を受け、不公平感を是正するために導入を決めたそうです。
具体的には、入社6か月以上の非喫煙者に対し、1年あたり6日の特別休暇を与えるといった内容になっています。制度導入をきっかけとして禁煙することにした社員もいたようで、社員の健康増進にも一役買っているようです。喫煙者にペナルティを課すのではなく、非喫煙者を優遇するこの制度。今までと少し視点が異なることから注目されています。
そもそもタバコ休憩はありなのか?
そもそも、休憩時間外にタバコを吸うために仕事を離れる行為自体に問題はないのでしょうか。
法的に言えば、所定の勤務時間に社員に仕事をしてもらう対価として、会社は毎月お給料を支払っていますので、社員が勤務時間中に勝手に仕事を離れることは労働契約違反となります。数分だからよいというものではないのです。
「スモ休」については、非喫煙者を優遇することで喫煙者との不公平感をなくし、間接的に禁煙を促す効果はありますが、実質的に会社が「タバコ休憩」を容認してしまっていると言えなくもありません。タバコを吸っていると「スモ休」はもらえないけれど、勤務時間中の一服についてペナルティはないからです。会社としてタバコ休憩の扱いをどうするかは、別問題として考えなければならないでしょう。
過渡期の制度としてはユニーク
このままの世の中の動向でいけば、いずれ公共スペースだけでなく社会全体が完全禁煙に移行していく可能性が大です。喫煙ルームなどもなくなり、仕事中にタバコを吸うなんてことは許されないようになるでしょう。
「スモ休」は、一部禁煙から完全禁煙に移行する過渡期の制度としてはユニークで、喫煙する社員の“急にやめられない”事情を組んだある意味優しい制度だと言えます。導入を検討する企業も出てくるかもしれません。今後、この制度で喫煙する社員がどう変わっていくか、とても興味深いです。
(大竹 光明/社会保険労務士)