スーツ姿にリュック、マナーとしてはどうなの?
最近、若者を中心にスーツ姿でリュック型のビジネスバックを利用しているサラリーマンが増えてきました。ファッション性も増しスマートフォンを操作するにも便利です。
しかし、捉え方によっては違和感もあるし抵抗感も残ります。一般的にはどうなのか?ビジネスマナーの視点で考えてみます。
ビジネスリュックは今後も広がっていく傾向
クールビズやウォームビズ、加えてスマートフォンの普及により、ファッション感覚や価値観、加えて「型にはまらない働き方」が推奨され、それらに様々な巧みな販売戦力が加味され、ビジネスシーンの在り方も従来の常識が通じなくなってきた感があります。マナーには不易流行的側面があるということです。
特にスマートフォンの普及により「両手の自由度」に価値が置かれるようになり、今後さらに機能性やファッション性に工夫が施されるようになると、ビジネスリュックの利用は益々広がってくると考えられます。
ビジネスシーンにおける心構え
しかし、リュックは認知されつつあるものの、フォーマルな雰囲気にはミスマッチと捉えられる面も多々あります。しかも明確な基準はなく、どれがOKで、どれがNOかといえば、決定的なけじめがないのが現状でしょう。
だから迷いは多々あると思いますが、目安としては相手あってのビジネスですから、自分の利便性やファッション性を考える前に、常に相手目線で考えることが必要です。
ちなみに「ファッション」は自分目線ですが、ビジネスシーンで要求される「身だしなみ」は相手目線です。従って、ビジネスリュックを着用して、相手がどのように感じるかを常に考えてください。
感じ方は相手の年齢、立場、価値観、業種などにより変わるでしょう。例えば20代の若者と50代、60代の年配者では大きく異なるし、アパレル・IT業界と金融などでも異なるでしょう。
いずれにせよ、特に相手に敬意を表する意味でも、あまりにもカジュアルな印象は避けたいものです。特に伝統や格式を重んじる会社や年長者、初対面の人には注意してください。
さらに他社を訪問するような場合、リュックを背負ったまま中に入るのは感心しません。他社を訪問する際コートやマフラーは玄関先で脱いで部屋に入るのと同じ理屈です。リュックも当然背中から降ろして手に持ち替えて下さい。
加えて混雑しているバス、電車、さらにエレベーターやエスカレーター利用の場合には他者に迷惑が掛からないような配慮が必要です。
新入社員がリュックを背負ってきたら先輩・上司としてどう対処する?
もし先輩、上司の立場で、後輩や部下とともに営業に出かける際、後輩や部下がスーツ姿にリュックサックを背負ってきたら、それを可とするか、不可とするかは意見が分かれるでしょう。またスーツにリュックを背負うのは不可として、それを注意するにも、賢い部下を納得させるだけの合理的な理由を探すのが難しいのが現状です。
ポイントは「ファッション」と「身だしなみ」の違いをキチンと説明してください。また、日頃から統一見解を決めておくことも大切になってくるかもしれません。
ビジネスマナーの本質
日本には平安時代から宮中において衣替えの風習があり、江戸時代になるとサラリーマンである武士は、4月1日、5月5日、9月1日、9月9日と一年に4回全員揃って衣替えをして秩序を保ちました。それが現在では「クールビズ」や「ウォームビズ」に変化し、何でもありのカジュアルな格好になりましたが、クールビズやウォームビズの本来の目的は「地球の環境保護」です。従ってラフな格好よりも地球に素敵なマナーを発揮することが必要です。ビジネスシーンもしかりです。
利便性、機能性、ファッション性を追い求めるのもいいかもしれませんが、ビジネスマナーの目的は「相手に好感を与え、よりよい人間関係を築くこと」です。リュックを背負うのも、常に相手がどう感じるか?で判断したいものです。
(平松 幹夫/マナー講師)