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成年後見人トラブルを防ぐためには?よくある失敗と対策

JIJICO 2017年10月6日 7時30分

増える成年後見人トラブル

判断能力が衰えた高齢者や知的障害者の財産を管理したり、身の回りに配慮(身上監護)して見守る制度として2000年から介護保険と同時に始まった「成年後見制度」。制度開始から17年を経て、認知度は上がり、利用者数も増加傾向にあります。2016年12月末の時点で制度の利用者は20万人を超えました。その反面、近年、この成年後見制度をめぐるトラブルも多く発生しています。

成年後見人が、管理財産の横領や権限の乱用等と判断され解任された件数は年々増加しています。家庭裁判所が発表している後見人の不正事件による被害総額は2010年6月から2012年12月までの間になんと94億4,000万円にものぼりました。トラブルに巻き込まれないようにするには、何に気を付ければよいのでしょうか。

成年後見人の約4割を占める「親族後見人」にありがちなトラブル

最高裁判所の発表によりますと、成年後見人のうち、子、兄弟姉妹、配偶者などの親族が就任しているケースは全体の約4割であり、そのなかでも最も多いのが子となっています。

一方で、親族後見人をめぐるトラブルは増加の一途をたどっており、日弁連が2011年に実施した「後見人等の不祥事案件に関するアンケート調査」によると、成年後見人が不正に財産を使い込む等して起こった被害の総額は1,000万円から5,000万円未満が41パーセントと最も大きな割合を占めております。

親族後見人のトラブルの特徴は、自分の財産と後見を任されている親の財産の区別をする認識がない人が多いことが挙げられます。特に親子関係の場合、「親の財産を預かり管理している」という意識が薄いので、財産を使い込むという悪い方向に向かってしまうのだと推測されています。使い込みを他の兄弟から指摘され、後から「争続」問題に発展したり、訴えられたりするケースもあります。

更に悪質で、最初から被後見人の財産を目的に、親族が成年後見人就任を希望するというケースまで出てきていますが、場合によっては、窃盗や詐欺と判断されます。

そのほか、親族後見トラブルでありがちなのは、そもそも後見人就任を他の兄弟姉妹に伝えていないケース。使い込み以前に、就任すること自体を「勝手に就任した」と、あらぬ疑いをかけられます。後見人就任は、必ず兄弟姉妹に通知をした後にして下さい。

第三者に任せるという選択

成年後見人を親族に任せることによって起こる「財産の使い込み」や「相続トラブル」などを避けるための方法として利用されているのが、後見人を弁護士や司法書士、社会福祉士など第三者である職業後見人に任せるという選択です。親族以外の第三者に任せる人の割合は65.0パーセントを占めており、従来から中心であった親族が成年後見人になる割合を逆転しました。

特に司法書士は、制度スタートの2000年から「公益社団法人成年後見センターリーガルサポート」という組織を作り、積極的に成年後見制度に取り組んできた実績があります。親族間で金銭をめぐるトラブルを避けるためにも、報酬を支払ってでもプロに成年後見人就任を任せることは有効な手段であると考えます。

また、専門家でも個人に依頼するのは不安という方は、弁護士法人或いは司法書士法人等の「法人」に任せられることをお勧めします。

最近注目の後見制度支援信託を利用する!

高額財産を他人に任せることに抵抗を覚える方は、「後見制度支援信託」の利用をご検討下さい。これは、財産を金融機関等に「信託」することにより、家庭裁判所の指示書に基づき、生活費や介護施設等への支払い等一定額が、定期的に後見人の管理する預貯金口座に振り込まれる制度です。後見人が管理する預貯金口座以外の金銭は、家庭裁判所の指示書に基づき信託銀行等が管理することになりますので、ご安心です。

どういうケースがトラブルになるのかを知り、誰でもがなりうる「判断能力の低下」に賢く備えましょう。

(山口 里美/司法書士)

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