そもそも働き方改革とは?
最近注目されている「働き方改革」とは、働く人の視点に立って労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土も含めて変えようとするものです。
具体的には、日本経済再生に向けて、長時間労働や正規・非正規の格差の是正、多様な働き方の実現などを図ることで生産性を向上させ、その成果を働く人に分配することで更なる成長を図っていく「成長と分配の好循環」の構築を目指しています。
この働き方改革のキーワードとも言える「労働時間と生産性」において、日本より労働時間が短く、生産性が高い働き方を実現している国がドイツです。
ドイツの働き方の特徴とは?
ドイツの働き方の特徴として、まず「労働時間の短さ」があります。ドイツでは、1日10時間を超える労働が法律で禁止されており、役所による抜き打ち検査や、違反していた場合の罰金もあります。しかも、罰金の支払いを命じられた場合、企業は会社のお金ではなく、長時間労働をさせていた部署の管理職に自腹で罰金を払わせることもあり、管理職は必然的に、どんなに忙しい時期でも部下が10時間を超えて仕事をしないよう、細心の注意を払うことになります。
また、「休暇制度の充実」もドイツの働き方の特徴です。ドイツでは、法律によって最低24日間の有給休暇を与えることが企業に義務づけられていますが、大半の企業は法律よりも多い30日間の有給休暇を認めており、さらに、所定の労働時間を超えて勤務した残業時間を貯蓄しておき、有給休暇に振り替えられる企業も増えている様です。
他国の働き方は参考になるか?
こうしたドイツの働き方を日本も参考にすべきではないか、という声も出ています。
特に、ドイツの「労働時間は短いのに労働生産性は日本を大幅に上回っている」という点はとても魅力的です。また、ドイツの働き方を参考にすることは、長時間労働の是正にも繋がり、働く人の視点に立った企業文化や風土を変えるきっかけになるかもしれません。
一方で、労働生産性を高めることができないまま労働時間だけを短くすることは、単に成果を減らしてしまう可能性もある、という点は注意しておく必要があります。
ドイツに限らず、日本が他国の働き方を参考にしながら働き方改革を実現していくためには、「数値上で労働時間が短く生産性が高いから」というだけの理由ではなく、「なぜ労働時間が短いのに生産性が高いのか?」という労働時間と生産性の関連性や現在の働き方に至ったその国の背景、日本との文化の違いなど、もう一歩踏み込んだところまで検討した上で参考にしていく必要があるのではないでしょうか。
(岸本 貴史/人事労務コンサルタント、社会保険労務士)