法改正や共働きの増加により進む、女性の家庭と仕事の両立
「M字カーブ」という言葉があります。これは日本の女性の労働力率を象徴するワードです。学卒後に就職するものの、結婚・妊娠出産を機に離職し、子供に手がかからなくなってから再び働きだすといった、典型的な日本女性の働き方をグラフにすると、M字カーブを描くことから有名になりました。特徴として、ちょうど仕事が充実してくるはずの30歳から40歳代に、女性のキャリアが中断される形となります。
しかし、近年では法整備が進んできたこともあって、小さな子供がいても女性が仕事を続けられる環境が、以前よりは整ってきています。
例えば、今年10月からの育児・介護休業法の改正では、子供の保育所が決まらないなどの理由があれば育児休業が最大2年まで延長できるようになりましたし、事業主に対して小学生未満の子供を持つ労働者に対する育児目的休暇制度創設の努力義務などが盛り込まれました。
また、共働き世帯の増加により、仕事と家庭を両立する女性が増えたこともあって、子供をもつ女性への配慮が社会的に浸透してきたことも、女性の継続就労を後押ししている要因だと考えられます。
配慮の中でのキャリア停滞にジレンマを感じる女性
子育てをしながら働く女性にとって、時短勤務や残業の免除といった会社の配慮は大変ありがたいものです。ところが、単なる勤務時間や仕事量の調整だけにとどまらず、仕事内容がこれまでより責任の軽いものに変更されたり、重要なプロジェクトから外されたりといった、その女性のキャリア形成にマイナスとなってしまう働き方に転換されてしまうケースもあります。
配慮という名のもとに、キャリアが停滞してしまうジレンマを感じながら働くことに、焦燥感を感じる女性もいるのです。
一律の対応ではなく、それぞれの希望に合ったキャリア形成ができる働き方を
子育て中であっても責任のある仕事がしたい、キャリアアップをしたいと望む女性も多く存在します。中には、より良い職場を求めて子育て中であっても転職に踏み切る意欲溢れる人もいるそうです。もちろん反対に、子育てが一段落するまでは仕事をセーブしたいと望む女性もいます。
大切なことは、妊娠中だから育児中だからと一括りにして、すべての人に同じ対応をしないということです。それぞれに対して、どのような働き方をしたいか、どのようなキャリア形成を望むのかをしっかり聞き取って、それに沿う働き方ができるような職場環境づくりをしていかなければいけません。
会社側は、個々への細かな対応は煩雑でハードルが高いと考えがちですが、従業員のキャリアが充実するということは、会社の戦力が強化されるということです。働き方が多様化しており、一昔前のように従業員を画一的に管理するのがそぐわない現在にあっては、労使双方にとってウインウインの状態になるよう職場環境を整備していくことは重要なことなのです。
また働く側も、配慮してもらって当たり前といったスタンスを取るのではなく、自分のキャリアと職場の状況を考慮して、バランス感覚を持った働き方をすることが大切です。出産・育児というライフイベントはもちろんお互い様な部分もありますが、仕事は自分一人でできるものではなく、上司や同僚の協力があって成り立っているという意識を忘れてはいけないと思います。
これからますます高齢化が進むに従い、育児だけでなく介護でも休業や仕事をセーブせざるを得ない労働者が増えていくでしょう。育児・介護によって自身のキャリア形成を諦めなくともよい職場環境を整えていくことが求められています。
(大竹 光明/社会保険労務士)