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海外会社の責任者として求められる資質とは?

JIJICO 2017年12月26日 11時30分

「仕事ができる社員」は海外会社の責任者としてはふさわしくない!?

日本人出向責任者でも、現地社員の責任者登用においても、求められる資質の条件があります。少し意外かも知れませんが、いわゆる「仕事ができる社員」はだいたい海外会社の責任者としてはふさわしくないことが多いと言うと驚かれるでしょうか。

「そんなことはない!海外会社の経営責任者として赴任される人は英語もできる人が多いし、外国人の部下を指導することなど、普通の人ではできるはずないじゃないか、できる人から選ばれていくんだからエリートだよ!仕事ができる人に決まっているじゃないか!」と言われるに違いありません。

ところが海外会社の責任者としてやっていくには、日本の常識が通用しない世界で、日本での「できる人」は必ずしも成功する条件とは言い切れないのです。一般に、「仕事ができる社員」は全て自分で仕事を完遂してしまう高い能力を持っています。

反面、その「仕事ができる社員」が上に立ってしまうと、周囲があまりよく見えなくなる方が多いようです。どちらかといえば、人を育てるマインドが相対的に低く、パワハラなどで人材をつぶしてしまうのもこの層が多いのです。海外では自ら仕事をやるというスタイルではすぐに行き詰ってしまいます。

人をじっくり育て、異文化の中で組織づくりができる人がより重要です。どちらかというと日本で実績を挙げた「できる人」は、自分自身の能力に自信があるだけに、どちらかと言えば異文化コミュニケーション適性が弱い傾向があるのです。

現地会社の責任者としてふさわしい人材とは

海外会社でも「仕事ができる社員」は必要な存在です。強い組織づくりや機動的に課題を解決するために不可欠です。ところが、この人材を現地会社のトップに据えるとうまくいかない場合が多いのです。特に、猪突猛進型の超優秀営業マンから現地会社の経営責任者に登用された方の会社で、現地社員が育って現地化を実現したところはあまりお目にかかったことがありません。それでは現地会社の責任者としてふさわしい人材はどのような資質を持っているのでしょうか。

1.専門知識があり経験・実績豊富な社員よりも視野が広く論理的思考をもつ人材

海外会社に出向する人材を選抜する際には、ほぼ国内事業での「経験と実績」を重視してところが多いのが実態です。むしろ仕事ができることよりも「経営思考力」や「論理的思考力」を重視すべきです。

海外では、特に「組織を動かし経営のかじ取りができる力」が重要です。現地で外部環境の変化を敏感に感じ取り、本社と現地の架け橋となるような柔軟な感性や行動力を備えた人材が求められます。

2.現地社員のやる気を引き出し育てることに能力を発揮する人材

現地社員が育つことは現地会社の成長発展につながります。現地社員の能力開発のために研修体系を作り上げていくことも重要ですが、仕事へのモチベーションを高めることがより効果的です。そのためには、社員が働きやすい環境や風通しのよい職場風土づくりを考えて行動、構築していくことに能力を発揮できる人材が求められます。

海外会社の組織力を高めることが海外展開を成功発展させるための第一歩であり、そのためには海外会社での人材育成の取組みは、スキルアップとともにモチベーション開発が最優先課題の一つと言えるでしょう。

3.問題発生時に自ら先頭に立って逃げない人材

現地社員から信頼されない責任者は完全に失格です。彼らが日本人出向責任者について最も注視している点が組織を引っ張るリーダーシップ、すなわち「人間力」です。仕事ができるかどうかは実はあまり見ていないのです。

この日本から来た上司は信頼できるか、困難に立ち向かう胆力があるか、そして自分たちのことを常に考えてくれているかを見ているのです。海外会社の経営は日本以上に毎日リスクと直面します。その都度経営者として経営判断していかねばなりません。

これら資質に共通するのは「異文化対応適性」を中核とし、「マネジメント能力」「コミュニケーション力(英語能力ではなく)」そして「行動発信力」の3つの海外経営能力を備え持っていることと言えるでしょう。

(杉浦 直樹/中小企業診断士)

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