頭痛を伴わない腹痛とは?片頭痛について
拍動性の片側性頭痛で嘔吐をしたりする頭痛は片頭痛といい日本人の840万人が罹患しているといわれております。片頭痛はCGRP(シージーアールピー)という蛋白が過剰に産生されて、ほぼ同時に脳の血管が拡張するという機序により出現すると言われております。
そのような片頭痛は子供にも起こります。しかし、子供の片頭痛は大人とは異なり、発作の持続時間が比較的短く、数時間で治まってしまうことが特徴です。そして、痛みの拍動性がはっきりせず、嘔吐や下痢だけあるいは、腹痛だけで頭痛が起こらないこともあります。
そして、子供の片頭痛で頭痛がある場合はかなり効率で嘔気や嘔吐など腹部症状を伴っています。
ですので、子どもさんの腹痛の原因として片頭痛の周辺症状に分類されている腹部片頭痛があります。比較的多い症状ですが、子どもは症状を適切に訴えることができないこと、頭痛専門医が診察するまでにいたらないことで診断がつかないことも少なからずあると思います。
腹部片頭痛はどんな症状?光や音に過敏になる特徴
腹部症状のみで頭痛を伴わない腹部片頭痛は、就学前のお子さんに多くみられます。この痛みは強く、腹痛とともに食欲不振や悪心・嘔吐、顔面蒼白をともなうことが多いです。胃腸炎などの消化器の病気と異なるのは、腹痛時に音や光に過敏になることです。子どもの場合、大人のように自分の症状を表現できにくいので、まぶしい光を嫌がったり、音に敏感に振る舞ったりしていないかを見ることが大切になります。原因は大人の片頭痛と同じく、CGRP蛋白が産生され、腹部の血管が拡張する機序によると考えられております。
片頭痛を予防する方法は?まずは生活習慣が重要!
生活習慣がとても大切です。寝過ぎや寝不足にならないこと、テレビやゲームで夜更かしをしないことなど注意が必要です。三度のお食事も大切で、特に朝ごはんを食べないと低血糖刺激が血管拡張刺激になり腹部片頭痛をきたします。
お昼前の体育の授業中に腹痛が起こるなど少なくありません。腹部片頭痛の回数が多い場合は予防薬を考えるものよいと思います。小建中湯(しょうけんちゅうとう)という漢方薬は小児片頭痛には最も使用される漢方薬のひとつであり試みる価値はあるでしょう。西洋薬では花粉症のお薬のシプロヘプタジン(ペリアクチン)(就寝前1回投与0.1mg/kg/日、最大4mg/日)や血管拡張剤のインデラル、抗うつ薬のアミトリプチリ就寝前一回投与(0.25mg/kg/日、最大10mg/日)などがあります。
ただし、副作用があることや生活習慣の改善でかなりコントロールが期待されますので、西洋薬は可能なかぎり最小限・短期間での使用にしたく、日常生活習慣によって腹部片頭痛は予防したいと思っています。
*頭痛発作の程度に応じますが、西洋薬予防薬は半年から一年半位使用することが多いです。
基本的な治療法・鎮痛薬について
大人の片頭痛の特効薬でトリプタン製剤がありますが、まずは小児によく使われる鎮痛薬であるアセトアミノフェンやイブプロフェンが有効なので試みてよいと思います。また、大人の片頭痛でも使用しますがドンペリドンなどの胃薬が嘔気を抑えるのみでなく頭痛自体も抑えるとされており、腹痛自体にも効果があることがあります。
なお、上記のお薬の中で小建中湯・アセトアミノフェン・イブプロフェンは市販されておりますが、他の薬剤は市販されておらず、内服には医師の診断と処方箋が必要となります。
(井上健/内科医)