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警察官の発砲、許される状況とは?発砲すると訴えられるリスクもある

JIJICO 2018年3月3日 7時30分

警察官の発砲が認められるかどうかは警察官職務執行法に規定

2月18日の昼に、大阪の繁華街において警察官がナイフを持って迫ってくる男に拳銃を発砲したという事件が起きました。銃弾は、男の右足を貫通したとのことです。

ドラマの世界ではよく見る光景でも、日本で警察官が発砲するということは珍しいことです。本日は、警察官による発砲についてお話しします。

まず、警察官が発砲することは自由にできることではありません。あくまでも、法規に基づいて許される場合があるにすぎません。

警察官職務執行法という法律では、「警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」と規定されています。

発砲行為は非常に限定されたケースのみ認められるとされている

この法律では、武器の使用につき、「必要と認める相当な理由」がある場合に、「必要最小限」の範囲で使用することが認められています。

さらに、同法では、その「武器により人に危害を加えて良い場合」をさらに限定的に規定しています。

それは、①刑法上の「正当防衛」や「緊急避難」に該当するケースと、②「死刑または無期もしくは3年以上の懲役もしくは禁錮」にあたる凶悪な罪を現に犯したか既に犯したと疑うに足りる十分な理由のある者が逃げるか抵抗した場合等でほかに手段が無いとき、③逮捕状により逮捕する際に抵抗や逃亡等した場合等でほかに手段が無いとき、です。

少し省略しているにもかかわらず、文字にしても長いですね。このとおり、法律では警察官が発砲可能なケースを限定していることが分かります。

今回の発砲が妥当かどうかは事件の詳細状況により判断されることとなる

冒頭の事件では、警察官が男の足を打ち抜いており、威嚇射撃ではなく、危害を加えているケースといえます。具体的にどういう状況だったのか、報道を見聞きする限りはっきりしませんが、③ではないことは明らかなようですので、①のうちの正当防衛か、②の条件を満たす必要があるということになります。

正当防衛であったにしても、②の条件を満たしたという判断であったとしても、拳銃による発砲が「やむを得ない必要最小限の行動だったか」という点が重要になってきます。具体的には、発砲に至るまでの経緯、男の言動、警察官と男との距離などから判断されることになると思います。

発砲したことで警察官が裁判にかけられた事例もある

警察官が発砲したことで逆に裁判にかけられたケースもあります。平成15年に奈良で警察官が車上荒らしをした疑いのある二人組に対して発砲し、一人が死亡したという事件です。平成24年に殺人と特別公務員暴行陵虐致死の罪で発砲した2名の警察官が裁判員裁判で審理されました。

また、死亡した方の遺族から民事でも国家賠償請求の裁判が提起されました。民事は請求棄却、刑事でも無罪と警察官側の全面勝利となりましたが、最終的な解決までは事件から10年以上の歳月を要したこととなります。このように、発砲をすることは警察官にとっても相当な覚悟が必要な行動であることが分かります。

(河野 晃/弁護士)

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