ソチ五輪で活躍したオリンピック選手たち、メンタルの強さも話題に
先日、2018平昌冬季五輪は17日間にわたる熱戦を終えました。日本は冬季五輪史上最多となる13個のメダルラッシュに湧きました。
世界の大舞台で、能力を発揮することは容易いことではありません。日頃の練習成果を発揮するための、メンタルの強さというものが必要となります。
女子スピードスケートで活躍し、複数のメダルを獲得した小平奈緒選手。彼女はオランダでの修行で身体も心も強くなったようです。2014年のソチ五輪の後、単身でスケート大国のオランダに渡りました。
現地のプロチームで2年間過ごしたとのことですが、オランダ語も理解できないことが多く、また乳製品の多い現地の食事で体調を崩すなどの苦労があったといいます。
オランダでは、厳しい練習を課すことをよしとする風潮のある日本とは異なり、本番に向けて徐々に力を入れていく練習法をとるらしく「自分を精神的に自分を追い詰めない」ことで、マインドを安定させるという考えが背景にあります。
世界の大舞台ではないにしても、日頃、緊張や焦りから自分の能力が発揮できないことは勿体ないことですよね。どうしたらここ一番で実力を発揮できるような強靭な精神力、自信、メンタルというのは身に付くのでしょうか。
メンタルの強さとは何か?安定した精神の強さは「剛」ではなく「柔」
「(精神的に)強くなりたい。」そう願う人は珍しくありません。
仕事で大きなプレゼンをする 恋愛で好きな人に自分の気持ちをちゃんと伝える 苦手な相手にも毅然とした態度で意思を伝える ダイエットのために面倒な運動を継続する 自分磨きのために毎日の努力を習慣化する単に「精神的な強さ」といっても色々ありますね。深掘りすると「緊張しないようにしたい」「不安を取り除きたい」「我慢強くなりたい」「やる気を出したい・頑張りたい」といった気持ちが背景にあるようにも見えます。
多くの人は「強さ」というものを「剛」のものとしてや「鈍感」なものとして捉えていることが多いです。例えば、負けん気のようなものや、恐いもの知らずのようなものです。
一時的なら、たまたまそういった”強さに似た”もので乗り切れるかもしれませんが、安定した強さというものは「剛」ではなく「柔」のものではないでしょうか。
「柔」の強さとは?「樫の木と葦」のお話から考える「受容」
イソップ物語の中にも、「樫の木と葦」という話があります。ある川辺に立派な樫の木が堂々と生えていました。樫の木は、風に揺らめく細い葦を見て、いつもばかにしていました「そんなに細くて大丈夫なのかい?」と。
ある日のこと、大嵐がやってきて夜中じゅう、強風が吹き荒れました。嵐が過ぎ去った朝、青空の下、葦はいつものように風に吹かれていましたが、樫の木は根っこからなぎ倒されていたのです。元気のなくなった樫の木に葦は、「太くて頑丈だからって強いわけじゃないんだよ。」と言ったそうです。
昨今流行った「レジリエンス」という言葉があります。自発的な治癒力や精神的回復力を表した言葉ですね。なにかとストレスや精神的な負荷がかかりがちな近代において、こういった能力が求められているのです。
ではどうしたら柔らかくいられるのか?それは「受容」という能力です。
「今」を受け入れることで緊張や不安を切り離し、心を静かに落ち着かせることができる
「受容」とは受け入れて取り込むことをいいます。私たちは自分の中で描く世界と、現実の世界との間に不一致があると、心が動揺したり、怒りや不安が湧きたつと思いませんか?
心が静かでいるためには、「受容力」が必要です。心理カウンセラーには必要な能力で、もしかしたら一流のカウンセラーの心を以ってすれば、アスリートはオリンピックで勝負できる心を持つことができるかもしれません。
例えば…
どうしようできなかったら→まだ結果は出てない
どうしようできなかったら→不安になっても能力は上がらない
どうしようできなかったら→できるって唱えても練習にならない
そうやって考えることができたなら、不安になる必要はありません。「今」を受け入れるしかないのです。
また、意識が自分に向いている人は、緊張したり不安になりやすいです。「受容」できたときには意識が自分の外側に向きます。すると何を伝えたいのか、どう表現したら伝わるのかといった感じになるため、緊張や不安を切り離すことができるのです。
(青柳 雅也/心理カウンセラー)