六花亭が「そだねー」を商標の対象として特許庁に申請
冬季オリンピックでカーリング女子のLS北見の選手が言っていたことで注目された「そだねー」を、北海道帯広市に本社のある六花亭製菓株式会社が「菓子及びパン」を指定商品として商標登録出願をしました。報道でこの出願を知って六花亭を非難する人もいたようです。
しかし、六花亭のホームページで公開されている3月22日付けの説明文によると、「そだねー」を製品名で使用したい考えとのことです。ただ、製品名として自社で独占するのではなく、他社の利用も許諾していくつもりのようです。
そもそも、「そだねー」は北見市の地域に限定した言い方ではないですから、六花亭が仮に自社での独占的な使用を考えて出願していたとしても、非難される筋合いは無かったでしょう。
六花亭は、道外の人には「マルセイバターサンド」がもっとも有名でしょうか(個人的にはマルセイバターケーキもお土産にお勧めです。自分用としてはチョコレートのモカホワイトが一番好きです。)。フリーズドライしたイチゴをチョコでコーティングしたストロベリーチョコも、何年か前に流行ったように思います。
六花亭は、帯広に本社がありますが、道産子としては「帯広の」という限定ではなく「北海道の」菓子メーカーの印象です。
全く関係ない業者が商標登録するよりも良かったのでは
私は、「北海道の」六花亭が、「そだねー」を商標登録出願してくれて良かったと思います。というのは、名称やフレーズで流行が生じると、全く関係がないのに大量に商標登録出願を出す業者がいるからです。
その業者は、困惑した関係者から許諾料を取得すること等を目的としていると思われます。そのような業者に先立って六花亭が出願できていたのであれば、北海道内の菓子メーカー等が「そだねー」を使用しづらくなることを避けることになったと思います。
実は六花亭より早く出願していた北見工業大学の生協(大学職員)
六花亭の出願(3月1日)より先の2月27日に国立大学の北見工業大学の生協が大学職員の名義で、菓子、パンの他に文房具類や被服などを指定商品として「そだねー」について商標登録出願をしていたようです。
商標登録については「先願主義」つまり早い者勝ちの制度となっていますから、同一・類似の商品・役務について同一・類似の商標の出願が重なったときは、先の日の出願人が商標登録を受けることができます。
「そだねー」が商標登録されるとしても、六花亭より早い日に出願した北見工大の職員が商標登録を受けることになり、六花亭の出願は特許庁に拒絶されることになります。
また、鹿児島県の酒造会社が酒類を指定商品として「そだねー」の商標登録出願を2月28日にし、その後取り下げたそうです。鹿児島の会社は、この出願が企業にとってマイナスのイメージになると判断したようです。
「そだねー」のようなフレーズでも商標登録は可能!
「そだねー」の商標化のニュースが流れて、そもそも「そだねー」のような相づちでも商標として登録されるのか疑問に思った方もいるようです。
結論として、「そだねー」のような言葉も商標として登録されるのは可能です。
人の知覚によって認識することができるもののうち、「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音」(これらを「標章」といいます。)であれば「商標」になり得ます(商標法2条1項)。
ですから、「そだねー」という文字も商標となり得ます。商標としての「そだねー」は、例えば商品であるお菓子の包装に「そだねー」という文字を付するという使用が考えられます。
商標登録すると「商標権」が発生し商標の使用を専有できる
商標登録がされると「商標権」が発生します。商標権は、指定商品または指定役務について登録商標の使用を専有する権利です。
さらに、商標権者は、登録商標に類似する「標章」を指定商品または指定役務に使用すること等を禁止することができます。(商標権に基づいた請求をしたり、逆に請求を受けたりした場合は個別具体的に細かい検討が必要ですので、トラブルになりそうな場合は早期に弁護士に相談しましょう。)
「そだねー」が指定商品を菓子として商標登録されるとすれば、その商標権者は、菓子の包装に「そだねー」の商標を付けたりする権利を独占することができるということになります。
その商標権者は、「そだねー」の菓子についての使用を他者に許諾することができますから、北海道内のメーカー等には「そだねー」を許諾し、道外の会社には許諾しないということもできるようになります。
「そだねー」は北海道ブランドとして育っていってほしい
商標制度は、基本的には、特定の企業・個人が自己のブランドを守るためのものです。今回は、北見工大の生協や六花亭が「そだねー」を北見市あるいは北海道で共有すべきブランドとして守ろうと動いたものと思われます。
良心的な道内の関係者が「そだねー」の商標登録を受けて、北海道のブランドの一つとして育っていくことを道民として期待します。
(林 朋寛/弁護士)