活況の土地取引、地価上昇に伴い不動産投資に関するトラブルも増加
空き家1000万戸時代と言われる中、土地取引が活況を呈しています。先月末に公表された土地価格の定点観測データというべき地価公示によれば、全国の地価は3年連続で上昇しています。
一方で、不動産投資にまつわるトラブルもときどき聞かれます。実際、アパート・マンションを購入した投資家が「そんなハズじゃなかった」と訴訟にまで発展する話を聞くと、不動産投資を躊躇するのも無理はありません。
不動産投資信託「REIT(リート)」が注目を集めている
不動産を購入するには何百万円、何千万円の資金が必要です。資金を借り入れるには銀行との交渉のテクニックも必要です。「サラリーマンが手軽に不動産投資」とはすぐにいきません。
そこで、不動産投資のトラブルをなるべく避けて、地価上昇の波に乗ることはできないか?それを可能にするのが「不動産投資信託」、英語の「Real Estate Investment Trust」を略して「REIT」を「リート」と呼ぶ投資商品です。日本ではJAPANの「J」を頭につけて「J-REIT」と呼ばれています。
リートは、不動産の所有権を株券のように小口に分割して証券にしたもので、仕組みは株式とほとんど同じです。
リートは安いもので数万円から購入できて、多くの投資家から集めた資金は不動産の購入に使われます。東京証券市場で株式同様、いつでも売買できます。配当もあるので、オフィスビル、マンション、ホテルから倉庫や病院まで、家賃が入ってくるものなら何でもリートとして取引されています。
そして、購入した不動産に入ってくる毎月の家賃はリートに集約され、年2回、分配金として投資家に分配されるのです。
REITの4つの魅力
リートの魅力は4つあります。まずは、なんと言っても地価上昇に伴う、値上がり益が期待できます。事実、リートの各銘柄を集計した東証REIT指数は、2012年から今年にかけて、実に2倍に値上がりしました。
2つ目は、年2回の分配金です。この分配金利回りは、現在おおよそ4~5%程度です。上場株式の配当利回りが平均1.5%程度ですから、株式に比べてもなかなか魅力的ではないでしょうか?
3つ目は、いつでも売却できることです。実際の不動産は、いざ売却しようと思っても不動産屋さんに仲介をお願いしてから数ヶ月かかるのが普通です。しかし、リートなら、思い立ったときに市場で売却して換金できるのです。特に市況が悪化したときは、素早く資産を守ることができます。
そして4つ目は、投資家から集めた資金で不動産を購入するときは、「プロの目」が入ることです。空き家が多い時代になりましたが、リートが購入する不動産は、そのようなことにならないよう、大きな駅の駅前の「いい物件」であることが多いでしょう。購入後も空室率は各銘柄で公表されていますので、随時チェックすることができます。
かつての「抵当証券」の二の舞にならないような制度設計
いかがでしょうか?実は40年ほど前、リートと似たようなしくみの「抵当証券」が大きな話題となり、同時に社会問題となったことがあります。現在のリートは抵当証券の二の舞にならないよう注意深く制度が設計されています。
最後に投資の基本は「安いときに買って、高いときに売る。」投資は自分の判断、自己の責任で行ないましょう。
(中山 聡/一級建築士・不動産鑑定士)