民泊解禁まであとわずかとなり独自の条例を定める自治体も
住宅宿泊事業法による民泊解禁まであとわずかとなりました。住宅宿泊事業法では、年間180日まで民泊営業をできることになっていますが、生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認められる区域においては、各自治体が民泊を実施できない期間を指定する条例を定めることができることになっています。その条例(案)の内容も少しずつわかってきました。
厳しい制限を課す条例のもとでは宿泊施設不足の解消は難しいのでは
多少の違いはありますが、学校や保育所などの「子育て施設」や「教育施設」の周辺および「住宅専用地域」での制限が多く、京都市のように「住宅専用地域」では月と月だけ営業を可能としている条例もあれば、兵庫県のように全面禁止の条例案もあります。
また、営業できる期間については、金曜日の正午から日曜日の正午までが多く、中には、仙台市のように土曜日の正午から日曜日の正午までの1泊のみのところもあります。このような規制の中で、採算が見込めない家主不在型の民泊を営業しようとする方はかなり少なくなると思われ、このままでは宿泊施設の不足を解消するまでには至らないでしょう。
「家主不在型」の諸問題を解決しやすい「家主同居型」の民泊推進を期待したい
むしろ、家主同居型の民泊を推進できるよう、税制面での支援策や実施の際の法にかかわる緩和策などを検討してもらったほうが、宿泊施設の不足解消の道が見えてくるように思います。
厳しい条例の背景には生活環境の悪化防止目的がある
このような厳しい内容の条例を定めるのは、生活環境の悪化を防止するためで、見知らぬ人の頻繁な往来、ゴミの不法投棄、タバコの路上ポイ捨て、深夜における騒音などの問題発生を防ぎ、住民の不安を拭うのが目的です。
家主不在型の民泊では、これらの問題が起こりうることは大いに考えられますが、家主同居型の民泊の場合においては、家主自らがゲストのマナー違反をその場で注意できますので、全く無いとは言い切れませんが、周囲に迷惑をかけるような問題が頻繁に起こるようには思えません。家主不在型の民泊と同じようなマイナスイメージが定着してしまった感があります。
マンションでも民泊禁止の規約改正が増えているが本当にそれでよいのか
昨年の夏以降、民泊禁止に管理規約を改正したマンション、または改正に向けて検討しているマンションが多くなり、私もマンション管理士として、その規約改正のお手伝いをさせていただく機会が増えました。
ほとんどが民泊禁止の規約改正なのですが、本当に家主同居型の民泊まで禁止していいのか、最近疑問を抱くようになりました。確かに、様々な問題を起こす可能性が大きい家主不在型の民泊営業を許容しない方が良いと思いますが、たとえば、友人宅に滞在するためにマンションを訪れた外国人ファミリーと、家主同居型の民泊を利用するためにマンションを訪れた外国人ファミリーとを比較してみた場合、両者に大きな違いがあるでしょうか。
訪問先以外の居住者からみれば見た目には区別できないと思いますし、民泊が話題となっている間は、規約違反でない友人宅を訪れた外国人ファミリーも民泊利用者に見えてしまうと思います。どちら場合でも多少の問題が起きると思いますが、マナー違反をその場で注意できますので、両差に差があるとは到底思えません。
日本に訪れる外国人が増えていくなかでどのような「暮らし」の未来を描いていくか
今、大阪の街を歩いてみますと、大阪の街は急激に国際色豊かな街になりました。私が子供の頃には、外国人と会うことはほとんどありませんでしたが、今は考えられないほどの外国人観光客が街にあふれています。こうした国際色豊かな街を目の当りにしている今の子供たちが大人になったとき、日本は今以上にグローバル社会になり、外国人の友人や知人を持つ人が非常に多くなるでしょう。
そうなれば、マンションの自宅に外国人の友人や知人を2、3日招く居住者が増え、マンションの玄関先やエレベーター内で外国人と顔を合わせることが日常茶飯事になるかもしれません。もちろん、そうなった場合には、日本人、外国人を問わず、友人または知人をマンション内に滞在させるためのルールをしっかりと作っておかなければならないでしょう。
このような未来像を思い描いてみますと、将来、民泊の姿がどのようになっていくのかはわかりませんが、家主同居型の民泊まで本当に禁止してよいのかどうかを、今すぐにでなくても結構ですので、もう一度、管理組合で考えていただければと思っています。
(小堀 將三/マンション管理士)