人手不足倒産・採用難の背景3つ
民間企業は人手不足やそれによる倒産に苦悩しています。人手不足になるのは、1.事業が発展し人員増加が必要な状況にもかかわらず、求人に対する満足な応募がない、2.求人に対する応募はあるが、採用辞退または採用後の早い時期に退職してしまう、3.短期・長期を問わず、全体的に離職者が多くなったことに起因していることが考えられます。
企業としては、人手不足の状況を解消しなければなりませんが、昨今は単に求人を出すだけでは人材を集められなくなっています。
顕著にみられる点として、インターネットの発達により、様々なサイトやSNS等で企業の評価・評判、マイナス面の書き込み、就労体験コメント、求人上ではなく実際の労働条件などの幅広い情報が把握される状況になり、面接前に敬遠されるケースが増加していることがあります。
実際に働いた労働者の体験談として、ネット上で通知されることで、求人広告だけではわからない情報がわかり、求職者も広く実態情報を探ろうと行動していると思われます。特に、ブラック企業リストが公開されていたり、事実か否かとは関係なくパワハラや長時間労働などの話が書いてあったりして、影響してることが考えられます。
一般的な雇用の概念にとらわれない働き手も増えている
社会的に、雇用されない働き方、あるいはフリーランスを模索する行動をしている求職者が増加していることも見過ごせません。自己の秀でた能力等を商品として、個が収益に結び付く機会が増加している社会になってきていることの影響が考えられます。
小規模企業では待遇改善などもしづらく厳しい採用活動に
人手不足の現状打開のため、多くの企業が労働条件の改革に着手しています。賃金を上げる、労働日数・時間を減らす、企業指定休暇を増やすなどの努力が見られます。しかし、一見すると有効に思えるこうした打開策も、労働条件が向上しないから人材が集まらないわけではないケースも多く、上記の事情に起因する状況打開にはなっていないようです。
それに、多くの企業、とりわけ小規模企業では、休日を増やしたり、労働時間を減らしたりすることは困難であり、賃金を社会水準に引き上げることは最も困難な方法であるため、着手することがほとんど不可能な状況にあります。
まずは求人票の見直しから取り組んでみよう
企業が取り組むことができることとして、企業評価を悪くしないようにしておくことも一案です。それは、求人広告のチェック段階で、ブラック企業ではないかとの求職者の過剰な意識が働くようになっているためです。ハローワークの求人においても、違法な求人や残業代未払いなどで行政指導があった、社会保険未加入であるような企業の求人票を受け付けない傾向にあります。
少なくとも、求人広告は、可能な限り、わかりやすく実態通りに詳細に記載することが肝要かと思われます。特に、必ず求職者のチェックにかかる賃金、仕事内容、労働時間、残業の有無、休日は具体的に書いてあることで、真正な求人広告を出す企業との評価に結び付くことが考えられます。この実施に資金は必要なく、すぐに着手できることがポイントです。
なるべく離職者が出ないような職場環境にしていくことも重要
人材募集は、漫然と求人広告を掲げても応募・採用に結び付けることが困難になっています。労働市場の傾向・特徴、応募者の視点などを踏まえ、実態通りの募集要領を告知することが肝要かと思われます。加えて、可能な限り離職者が出ないようにする企業の労務戦略が重要になっています。そのためには、職場環境を良好に維持・調整することは重要なファクターになります。
(亀岡 亜己雄/社会保険労務士)