電通が月1回の平日休業を試験的導入へ
大手広告会社の「電通」は、働き方改革の一環として、月1回、平日に全社一斉の休業日を試験的に導入すると発表しました。
発表によると、今年6月から12月までの試験的な導入で、休業日は毎月水曜日か金曜日に設定されており、コンディション調整や自己啓発など「よりよいアウトプットのために自分をインプットする日にする」とのことです。
「働きやすさ」を定義づけて目的に向けた職場づくりを
最近では、週休3日制や連続で取得できる休暇など、特別な休暇制度を導入する企業も増えてきています。
一方、「働きやすい職場」に決まった定義はなく、目指すゴールが不明確で取り組む意欲がわかなかったり、取り組んでみても思ったほど成果に繋がらなかったりというケースも多い様です。
そこで、まずは自社における「働きやすさ」を定義づけることが働きやすい職場づくりの第一歩となります。この際、従業員アンケートや面談、ミーティングなどで「働きやすさ」に対する労使間の認識のずれをどこまで解消しておけるかが後々の成果に大きく影響してきます。
従業員が働きやすい職場づくりは経営者にとってもメリットがある
また、一般的に働きやすい職場とは、休日が多く労働時間が少ない職場など、従業員にとって働きやすい職場であると考えられています。しかし、働きやすい職場づくりを実践していくことは、経営者側にとっても、人材の流出を抑えたり多様な人材を活用したりすることに繋がっていきます。
つまり、働きやすい職場を整備することは、既存従業員の満足度の向上だけでなく、今後起こり得る職場のヒトの課題に対する予防効果も期待できるということです。
短・中・長期での影響をシミュレーションしておくことが重要
一方、「働きやすさ」のみを目的とした制度の導入には注意が必要です。
働きやすさだけを追求して休日を増やしたり労働時間を減らしたりすると、短期的には問題がなくても、長期的には売上、利益など事業の成果が思っていた以上に減少したり、場合によっては経営状況が悪化してしまうことさえ起こり得ます。そして、この経営状況の悪化は、経営者にとってだけでなく、従業員にとっても減給や解雇など、働きやすさとは真逆の宣告を受ける危険性をはらんでいます。
こうした状況に陥らない様に、休日増加や労働時間削減を検討する際には、その取り組みによる売上や利益などへの短・中・長期での影響をシミュレーションしておくことが望まれます。予め経営に与える影響を検討しておくことで、経営者側の漠然とした不安が見える化でき、安心して積極的な取り組みをしやすくなるだけでなく、休日増加や労働時間削減による影響をカバーするために目指すべき生産性の水準も決めやすくなります。
労使協力して互いに働きやすい職場づくりを目指す
課題はありつつも、働きやすい職場づくりへの取り組みは「労使共に快適な職場」を目指すチャンスにもなり得ます。
そもそも、働きやすい職場を維持していくためには、経営が安定していることが欠かせません。そして、休日を増やしたり労働時間を減らしても事業の成果を維持できる、つまり働きやすい職場をつくっていきながら経営の安定を保っていくためのカギがやはり生産性向上にあります。
また「経営の安定を保ちながら働きやすい職場をつくる」ことには労使共にメリットがあるので、こうした環境づくり自体を労使共通の目的にすることができれば、職場の求心力向上にも繋がります。
まずは、自社の経営や職場環境についての今と未来、そして自社における働きやすさの定義や今後目指す生産性の水準などについて、労使で認識を共有することから始めてみてはいかがでしょうか。
(岸本 貴史/人事労務コンサルタント、社会保険労務士)