セクハラのつもりがなくても受け手の主観によるのがセクハラ
セクシャルハラスメントは、「男女雇用機会均等法」第11条に定義されていて、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とされています。
性的な言動が100%セクハラになる、と言うことではなく、相手の意に反する言動が該当します。事務次官は、全体を見れば、セクハラではないとセクハラを否定しています。確かに相手の意に反していなければそうなりますが、相手の主観によって決まってしまうため、いくら本人が否定しても今回はセクハラに該当するでしょう。明らかに就業環境を害しています。
オフレコ取材を勝手に録音して外部にデータ提供したことの是非
今回、テレ朝記者は、オフレコの取材にもかかわらず録音して、それを外部の新潮社に渡していました。このことが記者倫理に反する、との見解もあって、テレ朝側も「不適切な行動で遺憾に思っている」とコメントを出しています。
野党と消費者庁でわかれる「公益通報の保護」に対する見解一方で、録音データを渡すしか訴えるすべがなく、致し方なかったとの見解もあって、賛否両論が出ています。野党は「公益通報者保護制度上は公益通報に当たり、不適切な対応ではない」と見ています。公益通報とは、消費者庁が管轄で「公益通報者保護法」で規定されています。
しかし、消費者庁では、今回の件について「公益通報者保護法では、労働者が労務提供先企業で、犯罪行為が行われている際、所定の通報先に通報した場合、保護されるというものであり、財務省のセクハラを通報したとしても保護の対象ではない」とコメントしています。
セクハラがあったときの本来の対応をあらためて考える
では、セクハラがあったとき、本来どのような対応をしたら良いのでしょう?セクハラの条文をよく見ていただくと、「事業主は、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」となっています。
今回の事例ではテレ朝側が何かしらの対応をすべきだったのではつまり、テレ朝側が、セクハラに遇った従業員からの相談に応じて、適切に対応する必要がある、と言うことです。テレ朝記者が、会社に相談しても何もしてもらえない、と判断して今回の措置を行ったとすれば、テレ朝側のセクハラ相談・対応体制に問題があったとも言えるのです。
航空会社が日本ハムのセクハラ発言に抗議した事例が本来の対応昨年10月に、日本ハム役員が羽田空港の航空会社ラウンジでラウンジ職員にセクハラ発言をしました。航空会社側が日本ハムに抗議して、役員が辞任することとなる事件がありました。航空会社の相談・対応体制が、しっかりしていたのでしょう。職員は安心して会社に相談し、会社もお客様でもある日本ハムに対してしっかり抗議をして、職員が安心して働ける環境を守りました。本来、これがセクハラに対する対応です。
企業は、セクハラ相談・対応体制を整備する必要があります。また、企業が対応してくれない場合には、公的な各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)でも相談に応じてくれますから、こちらを利用することも良いでしょう。
(影山 正伸/社会保険労務士)