サルも温泉でストレスを解消している可能性があるという研究発表
温泉に入る野生のニホンザルが見られる「地獄谷野猿公苑」温泉は、海外でも広く知られています。このサルたちの温泉に入るという行為。これによりサルもストレス解消をしている可能性があることを京都大霊長類研究所のラファエラ・サユリ・タケシタ研究員のチームが国際科学誌電子版に本年4月3日発表しました。
これは、冬季にサルの便中に含まれるストレスの指標となるホルモン濃度を測定することで分かったということです。動物も環境等により様々なストレスに暴露され、その結果、おのずとその対応策を見出してきていると考えて間違いないと思われます。
ペットは野生のサルとは違う環境にいるためむしろ入浴はストレスかも
一方、家族の一員としての存在となっているペットたちにとって、上述のニホンザル同様に入浴がストレス軽減につながるかどうかというと私自身は否定的な見解を持っています。
大きな違いは二つあり、一つは、安定した生活環境。もう一つは、能動的入浴か受動的入浴かによります。ペットの多くは空調のきいた室内に生活し、季節環境によるストレスを受けにくくなってきています。
また入浴に関してほとんどのペットが受動的入浴であり、入浴の後、消化器症状を呈し来院するケースも少なくありません。いわば入浴がストレスとなるケースが多いと感じています
ペットの入浴についての3つの意義
では、ペットの入浴に関しその必要性(目的)を考えた場合、次の3つがあげられます(この際の入浴とは、シャンプーなども含めます)。
1.皮膚病治療 2.衛生的観点 3.美容的観点1の皮膚病に対しての治療としてシャンプーをしていただく場合、症状や病態にもよりますが1週間に1回から2回の薬浴をお勧めしています。その際用いるシャンプー剤は、動物病院で処方される適切な薬用シャンプーを用いてください。
皮膚病の多くは、皮膚の抵抗力が低下しており、皮膚に常在する細菌が原因となり病態が悪化しているケースがほとんどとなります。
2の衛生面について、排便排尿により局所的に汚れる場合は、必要に応じて部分洗いをお勧めしています。
3については、ペットの品種や飼い主の方々のご都合などから月1回程度が多いように思います。
動物の皮膚は、被毛と皮脂により皮膚バリアが形成されています。通常、シャンプー剤(もちろん動物用)などを用いて洗う場合、上記1の皮膚病以外の場合は、月に1から2回程度が皮膚バリア破壊につながらなく適切な回数といえます。
湯温は38度前後とし、シャンプー後はしっかりすすぎ、ドライヤーを用いて十分乾かすことが必要です。ドライヤーを使用する際は温風で火傷をする場合もありますので体から離して、温風・冷風を交互に使い毛の根元から乾かしてください。
ペットにとって入浴は、幼少の頃より慣れ親しんでいて自ら望む場合を除き、ストレスとなる場合が多く、また、シャンプーの頻度やシャンプー剤よっては皮膚への悪影響につながる場合があります。今一度、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
(田村 兼人/獣医師)