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「セクハラ罪」はないが刑法上の犯罪に該当するセクハラ行為はある!

JIJICO 2018年5月29日 7時30分


刑法で犯罪として成立するセクハラ行為がある

財務省の前事務次官のセクハラ問題をめぐり、麻生太郎財務大臣が「セクハラ罪という罪はない」などと発言したことが波紋を広げています。そこで、セクハラをめぐる日本の法制度についていま一度考えてみたいと思います。

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)とは、広い意味では性的嫌がらせ全般を指します。他方、職場内の性的嫌がらせについては、「職場において行われる性的な言動への労働者の対応により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的言動自体により労働者の就業環境が害されること」という男女雇用機会均等法上の定義が参考になります。こうしたセクハラを防止する措置が雇用主には法的に義務付けられているのです。

そして、性的嫌がらせについていえば、当然その内容によっては刑事事件に該当する場合もあるのであり、そもそも麻生大臣の冒頭の発言は疑問です。この点、法務省の委託により作成されているセクハラ防止のためのリーフレットでも 、セクハラに関連する法律として、公然わいせつ罪(刑法174条)、強制わいせつ罪(同175条)、強姦罪(同177条)、準強制わいせつ罪(同178条)、名誉毀損罪(同230条)及び侮辱罪(同231条)が列記されています。

参考:法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/jinkennet/asahikawa/sekuhara.pdf)

こうした犯罪行為に該当するセクハラ行為が、民事上も不法行為として損害賠償の対象となることは言うまでもありません。

犯罪まではいかないセクハラでも民事上の責任は十分ありえる

しかし、犯罪行為まではいかないセクハラ行為でも、民事上の損害賠償責任は十分に生じます。この点、かつては当該セクハラ行為に性的意図があったかなかったかで判断した判決もありましたが、現在の裁判の傾向は全く異なります。

現在の裁判ではセクハラの「意図の有無」は関係なくなってきている

性的意図がなくても被害者が性的に不快と感じれば比較的軽微な行為でも不法行為と認定されるのが潮流です。たとえば、カラオケの個室で他人が歌っていた曲にあわせてダンスを踊った行為でもセクハラとして不法行為が認定されています。

民事訴訟での慰謝料は100万円~1000万円にもなることも

セクハラ事案の慰謝料額としては、言葉だけの場合には100万円以下となることが多くても、身体、特に性的部位に触れた事案では高額になります。特にセクハラ被害によりPTSDなどの後遺症が生じた場合には逸失利益も含めて1000万に迫る賠償額となることもあります。また、社内のセクハラ被害を放置すれば会社としても安全配慮義務違反を問われ、損害賠償責任が生じることにも注意が必要です。

そのため、会社としても、セクハラに対する適切な対応、具体的には、1.社内のセクハラ方針の明確化と周知、2.セクハラ相談窓口の設置、3.セクハラ事案への迅速かつ適切な対応、4.被害者のプライバシー保護と不利益な取り扱い禁止、を徹底することが必要です。

日本では、冒頭の麻生大臣の発言に象徴されるように、以前としてセクハラに対する認識が十分とはいえません。どのような行為が許されないのかいまいち想像しにくいと感じられる人は、前述の法務省のリーフレットに記載された事案なども参考に、ご自身でまずは勉強されることをお勧めします。

(永野 海/弁護士)

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