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民事裁判のIT化で裁判手続きはどのくらい効率化する?

JIJICO 2018年5月30日 7時30分

「3つのe」の観点で進められる民事裁判手続きのIT化

政府の有識者会議は、民事裁判手続きについてIT化、ペーパーレス化を目指すとする提言をとりまとめ、公表しました。

有識者会議では、IT化を推進すべき理由として「紙媒体で書面を提出することは手間やコストがある」「遠方の裁判所に出頭する負担がある」「裁判書類の保管場所に困る」という意見が出されています。

このような意見を受けて、有識者会議では

1.e提出 2.e法廷 3.e事件管理

という「3つのe」の観点から検討を進め、実現を図っていくのが相当である、としています。具体的には、訴状等の裁判所提出書類の電子化、手数料納付のオンライン化、判決等裁判所からの書類の電子交付、ウェブ会議システムの利用による裁判手続きの実施などが提言されています。

現在の民事訴訟手続きと比べて変わるところは?

では、現在の民事裁判手続きと比較するとどう変化するのでしょうか。

デジタル化で紙(FAX)がPDFに置き換わる

まず、現在の民事裁判手続きでは、裁判所へ提出する書類は紙媒体に限られています。

しかし、原本を提出すべき場合を除き、FAXでの送信によって書類提出を行うことができるため、訴状以外の多くの書類については、裁判所に持参したり郵送したりする、ということはありません。FAXが古くさい、という点はありますが、IT化によってもFAXがPDF送信に代わるという違いがあるだけ、と言えるかもしれません。

予納金の電子納付は裁判所の負担も減る

手数料の納付も現在は収入印紙を訴状等に貼って行っていますが、予納金(相手方への郵送費用などのために裁判所に預けておく費用)は既に電子納付が可能となっていますので、納付対象範囲が広がることになります。

これについては、いちいち収入印紙を買いに逝く手間が省けますし、裁判所側の管理等の負担も減ると思われますので、現場としては歓迎すべき変更だと思います。

ウェブ会議システムの導入は弁護士によって感触が異なる

訴訟の進行については、原則として双方当事者または代理人が裁判所へ出頭する必要がありますが、相手方代理人が遠方の場合には「電話会議システム」を使った手続が認められており、多くの事件では電話会議システムが活用されています。

ウェブ会議システムが導入された場合、原則としてウェブ会議で手続きが実施されることになれば、代理人が裁判所に出向かなくてもいいという点で利便性は向上すると思われます。

しかし、電話会議では裁判官や相手方の雰囲気がつかめないため、遠方でも可能な限り出頭するほうが望ましいと考えている弁護士も筆者を含め少なくないと思われますので、この点は弁護士によっても違いが出るかもしれません。

劇的に変わるというよりも現在の運用の拡大路線

資料の保管は現在は全て紙媒体ですので、これを電子化するという点は現在の実態と大きく変化することになりますが、それ以外の点については今回提言されたIT化で民事裁判手続きが劇的に変わるのではなく、現在の運用を拡大するということになるのではないかと考えます。

情報セキュリティの強化など検討課題もある

もっとも、IT化の推進に当たっては情報セキュリティの強化や本人訴訟への対応などが有識者会議でも指摘されており、この点は今後の検討課題です。また、IT化、効率化を推進するあまり、裁判所や弁護士事務所の雇用・労働環境に悪影響が生じる可能性があるとの意見もあり、色々と考えていくべきことは多いと思われます。

(半田 望/弁護士)

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