入社6か月未満でも有休が取得に厚労省の有給付与ルール方針変更
厚生労働省が、転職する人が転職先でも有給休暇をとりやすくするために付与ルールの指針を変更するようです。
具体的な変更内容は、「転職後(入社後)、6か月たたなくても入社直後から有給休暇が取得できるようにする」というものです。現在の法律では、入社してから6か月間は有給休暇を与えなくても問題はありません(もちろん、与える分には問題ありません)。
確かに、筆者が会社で人事を担当していた時、転職してきて2か月くらいの社員が突然入院することになり、有給がまた発生していないため「欠勤」で処理せざるを得ないという気の毒なケースが生じたこともありました。
入社した直後から有休が取得できれば、転職してきた社員は安心して働くことができます。しかし、私は現行の付与ルールをどれだけの会社が実行し、労働者が有給についてどこまで理解しているのか、人事労務の仕事に関わり始めて以来ずっと疑問に思ってきました。
労働基準法で定められた有給休暇のルールを順守している会社は少ない?
筆者が大手小売業で人事を担当していた時、新たに入社する従業員には、パートやアルバイトも含めて必ず就業規則の説明会を実施していました。有給の話をすると、「ここはパートにも有給があるのですか?!今まで働いたところでは有休なんかありませんでした。」とか、社員で入社した人からも「さすが大手ですね。前の会社には有給なんてありませんでしたから。」といった発言が多く聞かれました。
社労士事務所を始めてからも「就業規則に有休休暇の規定はあるのだけれど、全く機能していない。」あるいは「パートさんから有休休暇についての問い合わせがあったのだけれど、パートに有給ってあるのですか?」といった相談が度々ありました。
データを取ったわけではないので感覚でしか言えませんが、現在労働基準法で定められている有休休暇の付与ルールを完全に実施している会社のほうが中小企業では少ないのではないかと思います。
有給休暇の買い取りは本来の有給の趣旨に馴染まない
また、有給休暇でよく議論になるのが、有休「買い取り」です。安易に使いきれない有休の「買い取り」を認めてしまうと、「労働による心身の疲れを解消する」という本来の有休の目的が果たせなくなるため、特別な事情がない限り認められていません。
では、なぜ有休を使い切ることができないのでしょうか。有休を取得したくても、仕事の都合で取得しきれないことも多いのですが、原因はそれだけではないと思います。
有給についてきちんと知ることが制度活用への第一歩
人事をやっていた頃、自分に有給があることを知らず、退職間際になって「買い取ってくれ」とか、有休に2年の時効があることを知らずに「何とかしてくれ」と懇願されたことが度々ありました。
つまり、従業員が正しく有休休暇についての仕組みを理解していないため、取得を逃すということもあるのです。有給休暇の仕組みを労働者が知らないことには、会社に取得を要求することはできません。有休取得を促進するために法律の改正も有効ですが、まずは、会社、そして労働者に有給休暇について教育することも大切なのではないでしょうか。
(小倉 越子/社会保険労務士)