犬の熱中症のほとんどが飼い主の不注意によって引き起こされる
近年、温暖化の影響もあり、日本の多くの地域でこの時期35度を超える「猛暑日」も珍しくなくなってきました。この暑さで、人も動物も熱中症予防とその対策が重要となってきます。
犬の場合、人のように汗をかくことができず、パンティングといわれる呼吸(あえぎ呼吸)によって熱を放出します。環境温度が高くなると、この熱の放出が不完全となり、正常な体温を保てなくなり高熱、脱水症状といった熱中症の状態に陥ります。犬の熱中症は、ほとんどが飼い主の方の不注意によって引き起こされます。これは進行すると確実に生命を脅かす状態へと進行しますので、日頃から十分な注意が必要です。
犬の熱中症の症状・予防法・対処法について
熱中症の症状パンティング呼吸、大量のよだれ、40.5度以上の体温、ふらつき(意識障害)、嘔吐、下痢(粘血便)、ぐったり動かなくなる、けいれん、昏睡状態など危険な状態へと進行していきます。
熱中症に遭遇しやすい場面1.エンジンを切って、動物を車中に残した状態で車から離れるような場合
JAFの調査では、エアコン停止からわずか15分で、人における熱中症指数が危険レベルに達すると報告されています。動物においても同様です。動物の車内放置は絶対にやってはいけないことです。
2.道路のアスファルトが熱く焼けている時間帯の散歩
動物は人に比べ地面に近い位置で歩きます。日差しのある日中、気温30℃でアスファルト表面温度は55℃に達するといわれていますので、地面からの輻射熱により、熱中症の危険が増します。十分な注意が必要です。
3.閉め切った室内でなおかつ、ケージ内での留守番をさせる様な場合
4.日陰のない野外で繋がれて飼われている場合
5.パグ、シーズー、ブルドックといった短頭種と呼ばれる犬種
6.高齢や肥満の動物
熱中症が疑われる際は、速やかに動物病院へ連れて行くことが必要ですが、応急処置としては以下のことを覚えておいてください。
1.暑い環境から涼しくて通気の良い場所へ移動させる。
2.シャワーなどを用いて、流水で体温を下げる。(この際、氷水を用いると血管が収縮してしまい逆効果となる場合がありますので注意してください。また、体温が39.5度まで下がったら水浴をやめてタオルで体を拭いて保温してください。)
熱中症に遭遇しやすい場面に対し、注意していくことが予防につながります。
1.車内に動物を放置しない
2.お散歩は、早朝や日没後アスファルトの温度が下がった時間帯を選び、保冷材等を首に巻き、できるだけ日陰を歩くようにする。飲み水も持ち歩き適時水分補給を行う。
3. エアコンを使用し25~26度に設定し室内の温度管理を行う。クールマットなどの保冷用品を使用するのもよい。
4. 野外で飼っている場合は、風通しがよく必ず日陰のある場所を選ぶ(コンクリートも熱くなるので注意)
5. 十分な飲み水を設置する
人間と暮らす動物は、限られた空間でしか生活できません。その生活空間が動物たちにとって安全で快適なものになるよう、日頃から注意を払うことで熱中症を含む不慮の事故に遭遇する機会を無くすることができます。
(田村 兼人/獣医師)