日本酒でよく見かける「生酒」「原酒」これはどういうもの?
日ごろ日本酒を選ぶ時や呑む際などラベルを見ることが多いと思います。日本酒好きの方でも意外と知らない日本酒の専門知識・・・。その中でもよく日本酒のラベルで見かけるのが「生」や「原酒」と言った文字。
更には「生もと」「山廃」などと言う意味不明な言葉も・・・。日本酒の世界にはびっくりするほど素人には良く解からない様々な専門用が当たり前に市場に溢れています。今回はその中でも「原酒」と「生酒」に焦点を当てて解説しましょう。
「原酒」とは?加水されておらず度数が高く濃厚な味わいが特徴
まずは「原酒」から。日本酒の「原酒」とは米、米麹、酵母、水等で発酵させて出来た「もろみ」を搾って造られたお酒にまったく水を加えない状態のものを言います。酒税法で「日本酒はアルコール度数22度未満 」と決められています。
「加水:かすい」と言う水を加えてアルコール度数を低くしたりするため工程でアルコール度数の調整を行いますがその「加水」をしていないお酒が「原酒」です。通常原酒のアルコール度数は18%前後から高いものだと20%前後のものをあります。
原酒の味わいは度数が高いためにかなり濃醇な味わいで飲む時に「きつい!」と感じられる方も多いでしょう。
米の味わいもしっかりとしており夏の季節であれば「ロック」などで楽しむことも出来ます。
日本酒にはフルーティーな香り立ちの「吟醸造り」で造られたものがあり特に女性にとても人気があります。このタイプの原酒ですと特に夏や暑い時期にクラッシュアイスに入れて柑橘類を加えカクテル風で楽しむのも良いでしょう。
「生酒」とは?熱殺菌処理がされていないもので3種類あり味わいも異なる
続いて日本酒の知識として最も厄介な「生酒:なまざけ」です。簡単に言うと「生ビール」とか「生牛乳」などでも同様ですが人や製品に影響を与える「菌」等を殺すための「熱殺菌処理」を施していないものが「生」と言われるものです。
日本酒の場合には一般的に発酵して出来た「もろみ」と言われる白濁したどろどろ状態の「どぶろく」を濾してできた原酒をタンクに貯蔵します。貯蔵する直前で日本酒製造工程ので「火入れ」と呼ばれる熱処理殺菌を行います。
熟成後、瓶に詰めて出荷しますが、その直前にも再度この「火入れ」なる殺菌処理を行います。通常のほとんどのお酒は二回の「火入れ」を施し出来上がっています。
この熱殺菌処理は「60度~65度前後 25分間前後」で「火落菌:ひおちきん」と「酵素」を殺します。理由は、火落菌と酵素は日本酒の中に残っていると保存状態に因りお酒の劣化を加速される要因になるからです。
「火落菌」とは乳酸菌の一種でどんどん酒をすっぱくさせ、酒を白濁させていきます。「酵素」は熟成スピードを加速させより劣化に近い状態にしてしまう働きがあるからです。
前出の「2回火入れ」ですがこの「火入れ」の組み合わせに因り「生」の表記には3種類あります。ここが素人にはなんとも厄介なところです。
【生酒】火入れを2回とも行っていないもの。「生生:なまなま」とも呼ばれています。
【生詰め:なまづめ】タンクに貯蔵する直前の火入れはするが、瓶詰めの直前の火入れしないもの。秋の旬酒の「ひやおろし」はこのタイプです。
【生貯蔵】火入れをせずに貯蔵し、瓶詰めの直前に火入れするもの。
このように「生」でも3種類に分かれますので理解しておきましょう。
同じスペックの日本酒で「火入れ」と「生」で飲み比べてみるのも楽しい
よく「生」はすぐに飲まないと劣化するから!と言う方がおりますが一概にはそうとも言えないのです。もしそうならば「生貯蔵」はありえないからです。
冷蔵庫に入れ、一番劣化の原因となる紫外線(日光等)に当てずに保管すると味わいに深みが出てくるものもいっぱいあります。
また「火入れ」をしたお酒としていないものでは味わいに違いがあります。「火入れ」をすると突然大人になったような落ち着いた味わいになります。「生」の状態のものはフレッシュで活き活きとした若々しい味わいです。すこし温度を低めにした状態で飲むと「生」のお酒のポテンシャルを感じることが出来きます。
毎年5月前後は同じ製品でも火入れと生が混在する時期でもあります。ぜひ機会があれば同じスペックの日本酒で「火入れ」と「生」で飲み比べてみるのも楽しいですよ。
(鎌田 孝/利酒師)