「内部通報」と「内部告発」の違い
2006年に「公益通報者保護法」が施行され、2016年12月には消費者庁消費者制度課から「公益通報もの保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民事業者向けガイドライン」が公表されました。
まず「内部通報」と「内部告発」の違いについて説明します。法は本来不正を知った内部者組織内部の窓口(指定法律事務所も含む)へ通報した者を保護し、組織内でリスクの早期発見、早期対応を期待していました。内部告発とは組織を飛び越えて、不正を知った内部者が行政、司法機関、マスコミ等の外部に情報を提供することを意味します。
内部告発で告発者が報復・制裁を受けた場合の法的な対応策
内部告発となると企業内部の不祥事が外部に漏れますので、一方では問題の解決が進んで行くメリットもありますが、他方企業としては、それなりの社会的制裁を受けますので、内部告発した者に対して何らかの制裁を加える等のデメリットも発生します。
企業から報復的な措置(例えば減給左遷、解雇)をとられた場合、法的な対応策はあるのでしょうか。実際、報復的な配置転換、解雇をされて訴訟にもつれこんだケースもあるようです。
その場合、内部告発した従業員に対しては、会社の配置転換、解雇は正当な内部告発に対する報復的阻止であり合理性のない配置転換で無効であるとか、解雇権の濫用であり、解雇無効である等を争っていくことになります。
企業が行った報復的措置と内部告発との間に因果関係が認められれば、配置転換、解雇は無効となります。ただ、この場合、会社は他の従業員等も総動員して色々な主張をしてくるのでなかなかやっかいなことになります。
というのも、会社も内部告発したことによる措置であるとは主張せず、会社としての都合(人員、予算等)や内部告発した者の業績が悪い、素行が悪い等別の論連を主張してくるからです。
そこで、会社から報復的措置をとられたケースでも内部告発した従業員としては、訴訟に多大な労力を費やすことも少なく得ありません。
従業員への報復的措置には刑事罰を課すことが検討されている
このような事態に陥らないよう、現在政府では、内部通報、内部告発した従業員に報復的措置を講じることを防止するため、刑事罰を課す検討に入っています。
会社が報復的措置を講じた場合には、会社に勧告を出したり、会社名を公表したりする行政措置を設ける方向で検討しています。悪質なケースでは罰金や懲役などの刑事罰も検討中です。
(中村 有作/弁護士)