悩みは自分で対処してみてから相談する
心の悩みは誰でも持つと思います。
それでは、それにどう対処していったらいいでしょうか。
基本的には「あまり自分で抱え込まない」ことと思います。けれどこれは、悩みがあればすぐに人に相談するということではなく、「まずは自分で対処してみて」その後で抱え込まずに相談する、ということです。
その理由は、人はいわゆる「自己治癒力」を持っており、今まで生きてきた中で、何らかの形で問題解決してきているからです。それを、人は解決への「個人的資源」(体験や本などで学んだ知識)を持っているといってもいいでしょう。
つまり、何か困難な場面に出会った時に、過去に同様な場面で自分はどう対処したかを振り返り、うまくいった方法をまた使ってみる、ということです。その上で
うまくいかないようであれば、適当に見切りをつけて周りに援助を求める(社会資源を利用)ということです。
誰に相談すべきかを考えるための3つのポイント
「信頼感」を軸に相談する相手を考えようこの「誰」に相談するかを考える時のポイントは、相手への「信頼感」だと思います。具体的には、
秘密を守ってくれるか 批判や評価なしに話を聞いてくれるか 必要な情報などを提供してくれるかが基準になると思います。
ですから必ずしも専門家でなくてもいいといえますが、身近に信頼できる相談相手がいない場合には専門家を利用することはいい選択肢と思います。
専門家の選び方・利用の仕方
(1)相談機関の選び方・公共機関をおすすめする理由まず、都道府県や市町村が設立している公共の相談機関を利用するのがいいと思います。理由は、スタッフなどの質が一定以上と考えられること、料金が低廉なこと(無料も多い)です。
例えば、メンタルヘルスに関しては「精神保健福祉センター(精保センター)」(地域によっては「心の健康センター」)があります。詳しくはインターネットなどで調べられたらいいと思います。
(2)カウンセラーの選び方・「臨床心理士」をおすすめする理由ちなみに現在日本では心理カウンセラーの国家資格はありません(ただし来年度から「公認心理師」という国家資格が誕生)。「○○カウンセラー」などはすべて民間資格で、各種団体が独自に発行しているものです。
その中でどうやって信頼できるカウンセラーを選ぶかですが、「臨床心理士」の資格を持っているカウンセラーを選んだらいい、というのが私の意見です。理由は、質的に一番高いと考えられるからです。というのは、臨床心理士になるには、現在大学院修士課程で専門の勉強をしたことが基本条件となっており、この資格要件は、博士号所持を除けば日本では最も高いものといえます。
ただ「臨床心理士」の資格の有無を除いても、どのカウンセラーを選ぶかについては、その経歴(臨床経験)が一つの重要な基準となると考えます。このカウンセラー自身の経歴は、今のインフォームドコンセントでは利用者への必要な情報開示として挙げられています。
また「秘密保持」を十分しないカウンセラーも避けるべきです。例えば、自分の担当した相談者のことを気軽に「事例(ケース)紹介」と称して、講演で話したり本で紹介しているカウンセラーです。
次に、特定の心理療法によって絶対良くなるなどと宣伝しているカウンセラーも避けた方がいいでしょう。なぜなら、万能のカウンセリング技法というものは存在しないというのが、各種の実証的な研究結果の結論だからです。
「賢い消費者」になることが悩み解決をスムーズにする
以上結論は、メンタルヘルスにおいても利用者として「賢い消費者」になるということです。私は常々、うまく援助を求めるのも一種のスキルと考えています。実際に悩みを抱えている時には、気持ちの余裕がなくて難しいことかもしれませんが、なんといっても自分のためですから。
(村田 晃/心理学博士・臨床心理士)