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サマータイム導入によるIT・コンピューターシステムへの影響は莫大!

JIJICO 2018年9月2日 7時30分


東京五輪の暑さ対策としてのサマータイム導入が話題に

今年の記録的な猛暑を受けて、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は暑さ対策の一つとしてサマータイムの導入を政府に求めたことが話題になっています。

ご存知の方も多いと思いますが、サマータイムとは日照時間の長い夏期の一定期間、時刻を早める制度です。サマータイムが導入されている欧米では一般に1時間早めていますが、五輪組織委員会はこれよりも長い2時間早めることを提案しています。

サマータイムのメリット、デメリットについては様々な意見がありますが、その中でIT機器や情報システムへの影響が大きいことがデメリットの一つとされています。

ITの世界では単に時計の針を進めればよいという訳ではない

IT機器や情報システムでサマータイムを導入することがなぜデメリットになるのか、それはコンピュータの時刻の持ち方に由来するからです。画面名や項目名は若干異なりますが、Windows PCでもMacでもスマートフォンでも、「日付と時刻」メニューがあり、その設定画面を開くと、「日付と時刻」と「タイムゾーン」という2つの変更項目があります。さて、コンピュータは時刻をUTC(世界標準時)で持っています。そして実際にコンピュータを使用する現地時間に合わせるため、タイムゾーンを設定しています。日本国内で使用されているコンピュータであれば、「東京 UTC+9:00」と設定されています。

もしこのコンピュータをロンドンにもっていった場合は、タイムゾーンを「ロンドン UTC+0:00」に設定することで、ロンドンの現地時間に変更できます。今ではほとんどのコンピュータはネットワークに接続されており、「時刻は自動設定」をチェックしてあれば、時刻とタイムゾーンに関する情報は自動で設定されています。

それでは、実際にサマータイムが導入された場合、どのような対応になるでしょう。上記のロンドン時間に変更した例で言えば、タイムゾーンの設定画面に「夏時間に合わせて自動調整」といった文言が表示されます。つまり、OSレベルではマイクロソフトやアップルが対応すれば、少なくともその時点での適正な時刻が表示されるようになります。

日本製の情報システムやアプリケーションへのサマータイム対応が困難

問題はコンピュータで動作する情報システムやアプリケーションです。日本国内で作成された情報システムやアプリケーションのほとんどは日本国内で使用されることを前提にしています。そのため、OSの様に「UTM+タイムゾーン」の様な変換処理を行わず、ローカルタイム(日本時間)でそのまま保持していることが予想されます。なぜならば、その方が面倒なプログラムを書かなくて済むからです。現状はそれでも問題ありませんが、サマータイムが導入された場合、様々な問題が予想されます。

サマータイムに切り替わる際に時間が飛んだり、通常時間に戻る際には同じ時刻が繰り返されたりします。その時刻をどう処理するか、ルールを決めてプログラム修正をしなければなりません。これに社会やビジネスのルールも関わってくることもあります。例えば、サマータイムへの切り替え時間をまたがって時間貸の駐車場を利用した場合、通常の計算式である
((終了時刻)-(開始時刻))×時間単価

で算出すると、サマータイムで瞬時に進んだ時間も含めて料金請求されることになります。こうした新たな料金計算ルールを確定させないと、プログラム修正を行うことができません。随所にこのような状況が表れ、しかも日本国内で一斉に修正プログラムを反映させる必要があります。過去の「2000年問題対応」とイメージを重ねる報道もあるようですが、対応期間の短さやITの利用範囲を考えると、その何倍、何十倍もの困難な作業になることが予想されます。時間の面でも費用面でも莫大なコストがかかるでしょう。さらに、その作業を行ったとしても、サマータイム期間の終了とともに、短期間でまたシステムを戻さなければなりません。

社会全体でこんなにもITが浸透している現在、「暑いから」という短絡的な理由でのサマータイム導入は、ITに限って言えば、非常に大きなリスクを伴うものだと考えられます。

(金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント)

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